NOVEL

2番目の女 vol.2 〜既読にならない週末〜

 

 

 

「同窓会のお知らせ」

大学の同窓会のお知らせだった。中を開いてみると、幹事には知っている名前がちらほらあった。

もしかしたら、良い出会いがあるかも知れない。

そう思った私は、出席に丸をつけて手紙を送った。

 

同窓会当日。会場へ向かうと、想像以上の人の数。大きな会場は人で溢れていた。見慣れない顔が多い中、ちらほらと知った顔も見受けられた。何とか仲の良かった子を見つけようと周りを見渡してみると、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。

 

「あれ、友梨ちゃん?」

忘れもしない声。忘れたくても忘れられない声。振り向くと、そこに立っていたのは翔太だった。おしゃれなスーツを着こなして、あの頃と変わらない笑顔で私の元へ近寄ってくる。

「えっと、久しぶり」

戸惑う私を他所(よそ)に、大学時代と変わらずに話しかけてくる翔太。気づけば翔太のペースに巻き込まれていた。

 

「知っている奴も少ないしさ、2人で飲みに行かない?」

ここで彼の誘いに乗ったらどうなるかなんて、わかりきっていた。それなのに、私は頷いていた。ずっと嫌いになったふりをしていただけで、私は翔太のことが忘れられなかったのだ。

 

向かったのは、ホテル。

もしかしたら、奥さんとは離婚したのかも知れない。

今度は、私のことだけを見てくれるのかも知れない。

頭には、都合が良いことしか思い浮かばなかった。見て見ぬふりをしていた。翔太の左手の薬指には、あの頃と変わらない指輪がはめられていた。

 

ホテルに入ると、翔太はいきなり私のことを抱きしめる。「会いたかった」なんて甘い言葉で囁かれれば、私の気持ちは高まる。だけど、ふと目を開けたときに見えた指輪に、理性を取り戻した。

 

私は翔太の胸を押して体を離す。驚いた顔をする翔太に、疑問をぶつける。

「翔太って、結婚してるんだよね?」

「え?してるけど」

恐る恐る聞いた私に対して、当然だというように言葉を返す翔太。

「じゃあ、私との関係って何?」

「友梨ちゃんのことも好きなんだよ、俺にはどちらかを選ぶなんてできないの」

 

そう言って私をベッドに押し倒す翔太。きっと翔太が言ってる「好き」は、私を繋ぎ止めるための「好き」だ。そんなのわかっているのに、私は翔太のことを拒めなかった。

 

 

 


 

 

 

ゆっくりと脱がされる服。甘い言葉を囁きながら重なる唇。そして、部屋中に互いの肌がぶつかり合う音が響いた。もう私は、翔太に身を委ねることしかできなかった。そして、私は意識を飛ばした。


意識を取り戻すと、隣には裸で眠る翔太がいた。起き上がってベッドの下に落とされた服を身につける。すると、私が起き上がった振動で翔太が目を覚ました。目を覚ました翔太は手を伸ばして、枕元のスマホを手にする。

私の視界に入ったのは、ロック画面に設定された小学生くらいの男の子。その男の子が誰かなんて、聞かなくてもわかった。

 

「見て、俺の子供。海斗っていうんだ」

聞いてもないのに、先ほどの男の子の写真を見せてくる。子供を見て一気に罪悪感が押し寄せた。私は財布からホテル代を取り出して、翔太に渡す。

「ごめん、もう終わりにしよう。翔太の家族を壊したくない」

でも、彼はそのお金を受け取らなかった。

「大丈夫、家族にはバレないようにする。だからまた会いたい」

そう言って翔太は、自分がはめていたネックレスを私の首にかけた。まるで、自分の所有物だというように。

 

結局、私は翔太からもらったネックレスを身につけたまま、家に帰った。

 

 

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