NOVEL

Second Woman vol.4~過去の共有~  

残業している中再度休憩室で会い、車で加澄を送ることに。彼女は人事部長との不倫から海外へ異動となり最近帰ってきたばかりだった。惹かれながらも複雑な気持ちの中、バーに誘われるが…。

 


前回:Second Woman vol.3~好意と思惑の狭間~

はじめから読む:Second Woman  vol.1~その後ろ姿にただ惹かれた、それだけの筈だった~

 

ふふっと彼女が笑う。

その目は俺を見ずにカクテルに唇をつける。

‘キスミークイック’

カクテルの名前をそう言ったのだった。

俺はぐっと身体を落ち着かせる。

「俺のことからかってます?」

変な声にならないように言う。まさか今すぐキスしろってわけではないだろう。

 

彼女がすぐに返事をしないのでこっそりマスターに目をやるが、この会話が聞こえていながらも素知らぬ表情だ。

「さぁ…どうかしら」

そう言いながら横に置いていた袋に手を伸ばした。

「はい、これ」

こちらに向けて紙袋を差し出す。中を見るとシャツだった。

 

 

「この間のシャツ、シミは取れたんだけどそのまま返すのも悪いかと思ってクリーニングに出していたの。それとは別にこれも」

細長い包みだ。

明らかにギフトパッケージなのがわかる。

「御礼にネクタイよ」

良いのだろうか。かえって恐縮してしまう。

「いえ、たまたま貸しただけですから…クリーニングまでしてもらってすみません」

「そこは‘ありがとうって言ってくれた方がかっこいいんだけどな」

また余裕の台詞をぶつけてくる。

「…ありがとうございます」

何だかペースにのせられているようで悔しい。

「気に入らなかったらごめんなさいね。でも、改めてこの間はありがとう」

じっと見て微笑んだ。

不意打ち過ぎる。

「何だか…まんまとペースにのせられてますね、俺」

悔しいので言い返した。

「あら、からかっているつもりじゃないのよ。もともとこういう口調なだけ」

「じゃあさっきの質問の答え、言いますね。今パートナーはいないですよ。辻本さんは?」

質問を返す。

どうせはぐらかされるのだろうと思って、カクテルを飲みほした。

次の一杯をオーダーする。

 

「…私もいないわ」

悲しそうな表情だ。

一瞬聞いてはいけなかったんだろうか、と思ったが先に聞いてきたのは向こうなんだし。

「でも、人事部長は今独身ですよね?よりを戻したりしないんですか?この間だって一緒にオフィスを出ていったじゃないですか」

会議が終わって三村と一緒に2階から見たときだ。

あの日が初めて彼女と会った日だった。

「赴任から戻ってきたばかりの日のこと?あれは以前お世話になった他社の方に挨拶に行っただけよ」

「でも向こうは離婚までしたんですよね。それは一緒になりたかったからじゃなくて?」