張り巡らされた罠に落ちるのは誰か?
謀略無尽に向けられる牙が突き刺さる…!
既に、投げられた債が地を這う時、伸るか、反るかの、心理戦が始まる!
はじめから読む▶玉の輿 vol.1~珠子の章~
あれは、まだ小学校2年生の時だった。
授業中に、隣の席のイワキ君が突然泣いた。
後ろの席だったユカリが、何やらイワキ君にちょっかいを出して、泣かせたのだ。
担任の先生が何事かと駆け付け、事情を聴くとユカリは言った。
『イワキ君の事を、生頼さんが好きだって言ったら、泣いちゃったんです』
珠子は確かにイワキ君の顔立ちが好みで、密かな恋心を躍らせていた。
その時、担任はこう言い放った。
『なんでそんな事を言うの!イワキ君が可哀そうでしょう!』
クラス中が静まり返った。
返す言葉も見つからず、珠子の身体は硬直した。
心底驚愕すると、声も涙も出ない。
ただ、感情の回路が一色に染まる。
『悔しい…!見返してやる!!』
その頃から、珠子は『玉の輿』の語源になった『お玉さん』に憧れを抱くようになった。
庶民の娘でも、幸せになれる。
ユカリやイワキ、強いてはこの担任にぎゃふんと言わせる存在になってやる。
誰もが自分にひれ伏すような、女に!
『なりたい』ではない。
『なる!』と決めたのだ。
学生時代のモテ男は、スポーツに長けているか、ファッショナブルな男だ。
でも、男の価値は、そこではない事を早々に認識した。
本当に女を幸せにできる男。
それは、血筋だ!