玉の輿から振り落とされないために、珠子は全ての手札を自ら切り捨てる!
友情、愛、プライド、未練…そして…
我が身をかけた戦いの中で、最後に残るモノとは…?!
はじめから読む▶玉の輿 vol.1~珠子の章~
「一体、どういうつもりだ!!」
ディナーを終え、雄一郎が自室に珠子を連れ込んだ。
案の定、激怒していた。
―よくもまぁ…―
底冷えするくらいの冷静さで、珠子は雄一郎からの罵声を受け止める。
一通り怒り散らかしたのち、雄一郎は珠子の頬を撫でてきた。
「大丈夫だから。ちゃんと、子供を作ろう?なぁ…」
捨てられた子犬のような眼差しさえも、あの時、見せつけられた変態だと思うと、吐き気がする。
「ごめんなさい。触らないでくれる?あなたには、癒してくれる女が沢山いるじゃない」
「…それは、遊びだろ?」
当たり前のように出てくる言葉に、虫唾が走る。
「ええ。そうね。でも、遊びならもっと上手くやって。
愛子と寝ようが、麻梨恵さんと寝ようが、どこの顔も知らない女と寝ようが構わないけれど、西園寺家の家名に傷がつくようなことだけはしないでください。
生まれてきたとしても、認知だけはしないで」
まさか!という雄一郎の表情が如実に全てを語る。
おっとりしていて、自分の言うことなら、何でも聞くと信じていた珠子に、そこまではっきり言われるとは思っていなかったのだろう。
雄一郎は、返す言葉もなく呆けた。
珠子の口から『西園寺家の家名』という言葉が出て衝撃だったはずだ!
芽衣を西園寺家に抱えた理由も、自ずと珠子には分かる。
外で、プレイボーイを気取っていても構わないが、雄一郎の過度な癖が暴露されることは避けなければならない。
しかし、珠子が芽衣と同じような感情を、雄一郎に抱けるのか?というのは、別次元の話だ。
そして、歪な関係を続けたままで居られないことに、そろそろ気付いてもらわなければならない。
それを昌枝に問うても、返答はしないだろう。
また愛子は、そこまで興味がないのだろう。
ならば…
珠子は、飛成に連絡を入れて、麻梨恵に連絡をとるようにお願いした。
麻梨恵は、意外にも珠子と会うことをすぐに了承した。