NOVEL

玉の輿vol.10 最終回~初志貫徹の章~

玉の輿から振り落とされないために、珠子は全ての手札を自ら切り捨てる!

友情、愛、プライド、未練…そして…

我が身をかけた戦いの中で、最後に残るモノとは…?!

 


前回▶玉の輿vol.9 ~有為転変の章~

はじめから読む▶玉の輿 vol.1~珠子の章~ 

 

「一体、どういうつもりだ!!」

 

ディナーを終え、雄一郎が自室に珠子を連れ込んだ。

案の定、激怒していた。

 

―よくもまぁ…―

 

底冷えするくらいの冷静さで、珠子は雄一郎からの罵声を受け止める。

一通り怒り散らかしたのち、雄一郎は珠子の頬を撫でてきた。

 

「大丈夫だから。ちゃんと、子供を作ろう?なぁ…」

 

捨てられた子犬のような眼差しさえも、あの時、見せつけられた変態だと思うと、吐き気がする。

 

「ごめんなさい。触らないでくれる?あなたには、癒してくれる女が沢山いるじゃない」

「…それは、遊びだろ?」

 

当たり前のように出てくる言葉に、虫唾が走る。

 

「ええ。そうね。でも、遊びならもっと上手くやって。

愛子と寝ようが、麻梨恵さんと寝ようが、どこの顔も知らない女と寝ようが構わないけれど、西園寺家の家名に傷がつくようなことだけはしないでください。

生まれてきたとしても、認知だけはしないで」

 

まさか!という雄一郎の表情が如実に全てを語る。

おっとりしていて、自分の言うことなら、何でも聞くと信じていた珠子に、そこまではっきり言われるとは思っていなかったのだろう。

 

雄一郎は、返す言葉もなく呆けた。

 

珠子の口から『西園寺家の家名』という言葉が出て衝撃だったはずだ!

 

芽衣を西園寺家に抱えた理由も、自ずと珠子には分かる。

外で、プレイボーイを気取っていても構わないが、雄一郎の過度な癖が暴露されることは避けなければならない。

 

しかし、珠子が芽衣と同じような感情を、雄一郎に抱けるのか?というのは、別次元の話だ。

そして、歪な関係を続けたままで居られないことに、そろそろ気付いてもらわなければならない。

 

それを昌枝に問うても、返答はしないだろう。

また愛子は、そこまで興味がないのだろう。

 

ならば…

珠子は、飛成に連絡を入れて、麻梨恵に連絡をとるようにお願いした。

麻梨恵は、意外にも珠子と会うことをすぐに了承した。