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名古屋港シートレインランド。大人でも子供でも遊ぶことが出来るようなアトラクションがたくさんある、レトロな空気が漂う遊び場である。
ターゲットであるまだ20代前半の女は、少し遊び慣れた感のある服装でその辺りをうろついていた。
夜に差し掛かり、段々と照明が点ってロマンチックな雰囲気になってきていた。が、彼女は一人である。
何か、面白いことはないかなぁ。
そんな考えが顔に出ていたのかもしれない。不意に近づいてくる男の影があった。
また変な目的の男か、そう思って彼女は顔を向けた。
立っていたのは、身長が高くてすらっとした、整った顔立ちの若い男だった。
思わず目を奪われる。彼はにこりと笑った。
「はじめまして」
「え? ……はじめまして」
戸惑いながら挨拶を返すと、男は少し困ったように眉を寄せて笑った。そんな表情までさまになっている。
「ごめん、ここ、初めて来るもんだから……。良かったら、オススメ教えてくれませんか?」
「え、あ。そこに園内の地図がありますけど」
指し示すと、「あぁ本当だ」と彼は照れ笑いした。スマートな印象ながらも危なっかしいその様子に、思わず案内をすると、彼はこちらを見て微笑んだ。
「優しいんですね」
「いや、そんなことは……」
思わず女が困ったようにかぶりを振ると、「ああ、そうだ」と男が不意に声を上げた。
「名乗らないのは失礼ですね」
そうして、彼は勝手に自己紹介を始めた。ふっと微笑んで、彼の名前と思しきものを名乗る。
「僕は、結城賢人といいます」
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そして、男女の影がアトラクションの中へと消えていった。
こうしてまたも首尾よくターゲットに近付いた賢人は、再び二つの顔を使い分けて生活していくことになる。
記者の顔と、女にとって魅力的な男を演じる顔と。
イルミネーションのロマンチックな空気が、辺りを満たしていた。
―The End―
はじめから読む:二つの顔を持つ男 vol.1~もうひとつの仮面~