NOVEL

ルピナス―芽吹く街角で 第一章 vol.3~アートアクアリウムで彼とのデート。謎の男に惹かれる令嬢だったが”天敵”に見つかってしまう...~

私たちはラウンジから出て、ホテルの近くにある自家製パンが美味しいカフェに入った。

私はベーコンとトマトが挟まったベーグルサンドとカフェオレ。

彼はクロワッサンとホットコーヒー。性格の違いが表れる様なブランチメニューだ。

 


前回:ルピナス―芽吹く街角で 第一章 vol.2~落ち込んだ私は、偶然出会った花屋のハイスペ男子を1日100万円で買おうとする...~

はじめから読む:ルピナス―芽吹く街角で 第一章 vol.1~世間知らずの令嬢インフルエンサー、500万フォロワー女子の悩みとは?~

 

 

湯気の立つコーヒーを啜りながらぼんやりと外を眺める彼の横で、私はカフェオレのカップを可愛く持ちながら、すまし顔でインスタ用の写真を撮った。

少し顔を補正して「おはよ♡」と文字を付けて。

すると瞬く間にコメントと、“いいね”の嵐が始まる。

私はそれを確認すると静かにスマホの明かりを消した。

 

 

「昨日の話だけど」

不意に会話を切り出してきたのは彼だった。

真正面から見つめられると、光の加減で色素がとても薄い髪と肌だと気づく。

「なに?」

冷たい声を出してしまう。

「万丈さんは」

「茉莉花、でいい」

「...茉莉花はとても綺麗で彼氏なんて何人もいそうなのに、昨日逢ったばかりの僕にどうして声をかけたの?」

彼は真っ直ぐに私に聞いてきた。誤魔化しは効かないな、私は意を決した。

「あのね、私、大学生なんだけど、インスタとかもしてるんだ。インスタでマリリンとか知らない?一応、インフルエンサーなんだけど」

「ごめん、インスタとかやってない」

「インフルエンサーとか知ってる?」

うーんと考える彼。

「少しなら」

「私がそれなの、インフルエンサー。今は大学とかやりたいこととか忙しくて、彼氏とか面倒くさくて作ってなかったけど、アンチが五月蝿いから、彼氏カタチだけでも作った方がいいかなって」

 

それと...と私ははみ出たトマトを指でつつきながらこう言葉を繋げた。

「あとね...これは頼みのひとつでもあるんだけど、今週土曜日に私、お見合いがあるの。親が勝手に決めた縁談なんだけど、だから恋人がいたら逃げられるかと思って。簡単に言えばお金で解決して揉め事を消そうとしてるの」

浅はかでしょ?と皮肉に笑う私。

まるで、私の人生みたい。

キラキラして、薄っぺらくて飾ってばかりで。

 

「茉莉花は、相手の人と会ったことあるの?」

彼はコーヒーを一口飲んで、こう言ってきた。

「ない、写真だけ。まるで大昔の結婚みたいでしょ?」

ねえノアさん、昨日、約束したし期間限定の恋人になってくれるでしょ?ともう一度さらりと聞いてみた。心は波の様にドキドキしている。

「もちろん」

と彼は笑った。