「三村さん、ちょっと良いかしら?」
「はい、何ですかぁ?」
「今度の創業記念パーティーの招待客の確認をお願いしたいのだけど」
「はぁい。いいですよぉ」
「そう?じゃあ、これがリストだから」
手渡されたリストにさっと目を通しながら佐智子が尋ねる。
「・・200件ほどありますけどぉ」
「週末までこれに専念してくれて良いわ。それとも出来ないかしら?」
礼子が意地の悪い視線を向ける。
「・・大丈夫でーす」
佐智子はいつものように笑顔を浮かべて承諾する。
「私も手伝うわ」
ひとみが声を掛ける。
「あなたは三村さんの持っている案件を引き継いで」
礼子が強い口調でそう指示した。
「三村さん、責任持ってやって頂戴ね」
200件の確認を4日間で完璧にこなすことは容易とは思えない。
もし佐智子が仕上げることが出来なければ、能力不足を理由に契約を切ることができる。多少の責任は問われるだろうけれど、目障りな佐智子がいなくなるのなら少々評価が下がったとしても構わない。そう礼子は算段したのだ。
「はぁい」
それを知ってか知らずか佐智子はいつも通り呑気な返事をする。
百合子と乃亜は下を向いたまま、我関せずという姿勢を貫いている。ひとみもそれ以上は何も言えずに口をつぐむしかなかった。