コロナウイルスの流行によって、県境をまたぐ移動の自粛が求められたことなどの理由により、登山人口が減少したといわれています。そこでブームになったのが、近場でより簡単に、そしておしゃれに非日常を感じることができるキャンプやグランピングなどのアウトドア。しかし、コロナが落ち着き始めた今、そんなキャンパーたちが注目しているのが「登山」だそう。2009年に流行ってから姿を消していた「山ガール」たちも再び戻ってくるかもしれません。
今回はブームになったきっかけや、山ガールの詳細を含めて、夏登山の魅力に迫ります。梅雨が明け、ぐんと気温が上がると、これまで雪で覆われて隠れていた山々が顔を出す…。さて、夏登山にはどんな魅力があるのでしょうか。
夏登山の魅力
夏は暑くてアクティブに動くことを億劫に感じる方も多いかと思います。ですが、標高の高い山は気温が低く湿気も少ないのでとても快適。夏だからこそ見ることができる景色もあり、魅力がたっぷり詰まっているようです。それでは、夏登山の魅力について紹介していきましょう。
魅力①:自然のパワーを感じることができる
登山に行くと、鳥のさえずり、青々と茂る木々が風に揺れる音や、小川の流れる音など、自然の豊かさをダイレクトに感じることができます。植物が多い山では、マイナスイオンはもちろん、樹木が発するフィンドチッドという香気成分で興奮が和らぎ、リラックス効果を得ることができるようです。慌ただしい日々を送る現代人にとって、そんな「森林セラピー」は、心にも体にも良い影響を及ぼすといわれています。
魅力②:抜けるような青空
ただただ広く、ゆっくりと雲が流れる空を眺めることで、張りつめていた糸が途端に緩むように感じます。よく、空に比べたら自分の悩みなんてちっぽけだなどと言いますが、まさにその通り。太陽の光が溢れるような清々しい空に包まれると、脳内のセロトニンの分泌量が上がり、気分が明るくなるのです。
魅力③:無数の星が輝く夜空
夏の夜空には、夏の大三角形や、北斗七星、赤く光るさそり座の一等星など、有名な迫力ある星たちが輝きます。都心では夜でも明るい場所が増え、星を眺める機会が少なくなりました。ですが、山には思わず息をのむような満点な星を眺められるスポットがたくさん。夜が短い夏は、あっという間に過ぎてしまうので、きっと惜しくなるでしょう。
夏山に潜む危険
標高2000メートル以上の高山でも、積雪がなくなり快適な登山を楽しむことができる魅力たっぷりの夏登山。しかし、さまざまなリスクが潜んでいることも忘れてはいけません。ここでは、夏山に潜む危険について見ていきましょう。
危険①:道迷い
これは登山するうえで、一番気をつけなくてはならないことです。簡単にいうと、行くべき方向ではない方向に進んでしまうことで起きるアクシデント。雪がない夏は、冬よりも視界が良好だと思われがちですが、実際、遭難が多発するのは夏シーズンなのです。地形図を使用して前もって歩くルートを確認すること、GPSアプリを使用すること、おしゃべりに夢中になり分岐を見逃したりしないことなどを注意するようにしましょう。
危険②:体調不良
早朝から行動することが多い登山では、車中泊などによって寝不足になりがちです。そういった少しの不調でも、ケガや事故につながりやすくなるので注意しましょう。また、山は涼しいといっても夏。熱中症にも十分気をつけてください。水分不足になると、手足がつったり、痺れやめまい、頭痛、吐き気が襲ったりします。こまめな水分はもちろん、塩飴などでの塩分補給も忘れずに。少しでも不調を感じたら、日陰で休養するなどしてゆっくりと回復を待ちましょう。
危険③:急な気象の変化
山の天気が変わりやすいことは、誰もが知っていることでしょう。自身が登っている山だけを見ていると、気づいたころには窮地に至ることがあります。先々の天候の変化をある程度予測することが重要です。特に夏山では、午後になると積乱雲が発生しやすくなります。また急に冷たい風や生暖かい風が吹いたら、雷がくるという合図だともいわれています。わずかな兆候を見逃すことがないように注意しましょう。
登山ブームのきっかけと山ガール
夏登山の魅力を知ったところで、そもそも日本人はどうして「登山」にハマりはじめたのでしょうか。ここでは、登山ブームのきっかけと山ガールの誕生についてみていきましょう。
第一次登山ブームは、日本山岳会の槇 有恒(まき ゆうこう)氏らがヒマラヤの8000メートル峰マナスルへの登頂を成功させたことが大きくニュースに取り上げられたことがきっかけだったといわれています。学校の部活動にも山岳部や、ワンダーフォーゲル部などが次々できたそう。また、働き盛りのサラリーマンまでもがブームに乗り、仕事が休みの週末に登山する人も多くいたようです。そして、登山をする人の中でストイックに山に登る「本格登山派」と低い山で自然を感じる「レジャー登山派」に分かれていきました。
1980年代には第二次登山ブームがスタート。これまで週休一日制だったのが、週休二日制になったことや、一家に一台自動車を持つ時代へと進んできたこともきっかけとなり、よりレジャー登山が注目を集めるようになっていきます。2007年ごろから、若者が登山に注目し始めたことにより、第3次登山ブームがはじまりました。そのころ、地味な印象だったアウトドアファッションでおしゃれを楽しみ、登山へ行く女性を「山ガール」と呼び、その言葉が、世の中を駆け巡ります。中でも、mont-bell(モンベル)が販売した「山スカート」は、ファッション性と機能性を兼ね備え、登山以外にも使用されるなど爆発的な人気に。そんな山ガールたちが山スカートと共に、現在の登山スタイルや登山者層を作り出したといえるでしょう。
登山人口の推移
第一次登山ブームから現代にいたるまで、登山人口はどのように変化していったのでしょうか。ここでは、登山人口の推移についてみていきましょう。
平成28年のデータを見ると、15歳以上の「登山・ハイキング」の行動者は972万7千人。男女別にみると、男性が494万5千人、女性が478万2千人と、やや男性の方が多いようです。また、年齢別に行動者率をみると、男性では65歳~69歳が13.2%、女性では60歳~64歳が12.0%と最も高い数字を出しています。
(参照:統計局ホームページ/統計トピックスNo.96/登山・ハイキングを行った人の状況 (stat.go.jp))
また、2022年に登山地図として人気を誇るアプリ「YAMAP」が発表したデータによりますと、登山者を年齢別にみると、50代が29.4%と一番多く、次に40代という結果に。ひと昔前に比べて年齢層が若くなっています。60代と30代の割合はほとんど変わらず、若い人にも登山が浸透していることがうかがえます。
(参照:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000135.000011352.html)
また、コロナで自粛が要され減っていた登山人口も、水準まで戻りつつあるようです。
いかがでしたでしょうか。
登山で味わえる爽快感や達成感は、キャンプとは一味違いますね。自然に癒しを求めるようになった現代人にとって、ひとつの逃げ場として浮上したのが登山なのかもしれません。夏山でしか感じることができない非日常を、体いっぱいで味わってリフレッシュしたいものです。
次回は、おすすめの夏山と併せて、おすすめグッズや服をご紹介します。山ガールが流行ってから数年。今ではあの頃を超えるかわいいアイテムが盛りだくさん!お楽しみに!
Text by yumeka