数ある筆記具の中でも圧倒的な存在感で輝き続ける万年筆。
気軽に始められる楽しさがある一方、その奥深い世界は一度はまると抜け出せない危険性もあります。
≫ 至極の万年筆生活 手書きの機会が減ったからこそ“手書き”の真価が問われる時代 |
目次
たくさんあるからこそ選択に困る贅沢 万年筆の選び方
万年筆を選ぶ際に、あまりの種類の多さに何をどのように選んだらいいのかが分からずに、戸惑ってしまうかもしれません。
しかし、万年筆を選ぶ際にはポイントがあり、ひとつひとつ条件を絞っていけば、あなたにふさわしい1本が必ず見つかるはずです。
ポイント① ペン先で選ぶ
ペン先の形や素材によって、書き味がまったく異なるのが万年筆です。
ペン先の形はメーカーによってさまざまですが、基本的には以下の3つが基準となっています。
・F(ファイン・細字) ・M(ミディアム・中字) ・B(ブロード・太字) |
漢字を書く日本人には一般的にEF(極細)~F(細字)が好まれますが、自分の使用方途や好みで選びましょう。
また、素材に関しては、適度な弾力性がありインクの酸にも強い金が代表的ですが、ステンレス製は書き味が少し硬めとなり価格もやや安価になります。
ポイント② ペン軸で選ぶ
万年筆はデザインで評価される面も多く、高級な万年筆の中には貴金属や宝石などで装飾が施されているものもあります。
軸素材を漆で塗った万年筆や蒔絵万年筆などは、伝統工芸品として海外でも高い評価を獲得しています。
万年筆は筆記具の中でもペン軸の自由度が高く、合成樹脂・金属・セルロイド・木などさまざまな種類があります。
太さや重さも重要なポイントなので、選ぶ際には見た目の好みとともに、そのような点にも注意するようにしましょう。
ポイント③ インクで選ぶ
万年筆によってインクを補充する方法が違うので、欲しい万年筆のタイプをチェックするようにしましょう。
・カートリッジインク
インクがなくなったら、新しいカートリッジに取り換えます。
初心者でも簡単に交換できるところが魅力で、手軽に交換したい人に向いています。
・吸入タイプ
万年筆の内部のピストンを動かして、インク瓶からインクを吸入して使用する仕組みです。
一見面倒臭そうに思われるかもしれませんが、インクを吸入すること自体も楽しみと思える方に人気があります。
・コンバータータイプ
万年筆にインクを吸入するための器具である「コンバーター」を装着して、吸入タイプと同様にインク瓶からインクを吸い上げます。
コンバーターにはつまみを回すタイプの『回転式』やノブを押して吸入するタイプの『プッシュ式』などがあるので、使用する万年筆の規格に合ったコンバーターを使用しましょう。
! また、万年筆自体にはインクが入っていないので、万年筆を購入する際にはインクも忘れずに購入しましょう。 |
素材や使い勝手などを中心にして選んでいて、考えが行き詰ってしまったら、インスピレーションも大切です。
ファーストインプレッションを頼りに、「見てピン!」ときた万年筆があったら選んでみるという方法もひとつの手です。
持っているだけで優越感を味わえる 文豪が愛した万年筆
「文豪」と呼ばれる作家たちが使う筆記具と言えば、万年筆しか思い浮かばないのではないでしょうか。
流行り廃りの少ない万年筆だからこそ、現代でも名だたる文豪と同じ万年筆をセレクトでき、書くときはもちろん、持っているだけで優越感もひとしおです。
使い込むうちに、あなたの文にも“文豪のような風合い”が出てくるはずです。
Montblanc/モンブラン マイスターシュテュック149
万年筆の代名詞として知られ、キャップのトップにはモンブランのシンボルマーク「ホワイトスター」が輝く、数多くの文豪に愛されてきた王道モデルです。
参考価格:9万5000円
・使用していた文豪
〇開高 健(1930-1989)
小説からノンフィクションまで幅広い作品を残した、昭和の文豪「開高健」。
ライフスタイルに強いこだわりを持つ男から「6本目の指」とまで言わしめたのが、このモンブランの逸品です。
・モンブランを愛した文豪たち
〇池波正太郎(1923-1990)
時代を超えて愛され続ける男の教科書『男の作法』では、「万年筆は男の武器」と語っています。
〇三島由紀夫(1925-1970)
ノーベル文学賞の候補にも挙げられた小説家であり、『午後の曳航』という作品の中には万年筆に関しての記述が登場しています。
Pelikan/ペリカン スーベレーンM600
ドイツ語で「優れもの」を意味するシリーズで、ペリカン万年筆の定番モデルとなっています。
本体は程よいサイズでペリカンらしい縦縞が美しく、程よい柔らかさと弾力を兼ね備えた書き心地です。
参考価格:4万円
・使用していた文豪
〇井上ひさし(1934-2010)
小説家、劇作家、放送作家として『ひょっこりひょうたん島』の生みの親として知られる文豪「井上ひさし」。
自身も愛用し、政治家の穀田恵二に「もの書きの心を貰ってほしい」と渡したのがこの万年筆「スーベレーンM600」だそうです。
・ペリカンを愛した文豪
〇井伏鱒二(1898-1993)
ペリカンの500NNを愛用していて、代表作の「黒い雨」の作中では、「万年筆ぐらいな太さの棒の様な雨」と万年筆を使った比喩を用いて雨を描写しています。
Parker/パーカー デュオフォールド
「万年筆の王道」とも呼ばれるほど、ベーシックながらに高級感を感じさせる王道の万年筆です。
美しいフォルムと細部にまでこだわったデザインは、持っているだけでも大人の雰囲気を醸し出し、高級感を味わわせてくれます。
参考価格:9万円
・使用していた文豪
〇アーサー・コナン・ドイル(1859–1930)
『シャーロック・ホームズ』の著者として知られる「アーサー・コナン・ドイル」。
デュオフォールドに惚れ込み、「力を入れなくてもいいからシャーロック・ホームズを生み出すことに集中できた」と本人が絶賛していたそうです。
・パーカーを愛した文豪
〇司馬遼太郎(1923-1996)
『竜馬がゆく』などの歴史小説で知られる作家であり、「司馬遼太郎記念館」の中の書斎には、万年筆を含め執筆当時の様子が再現されています。
育てる楽しみを味わってみてください
万年筆は“万年”筆というくらいですから、メンテナンスさえしていれば、長い期間使える筆記具であり、万年筆を愛する「愛好家」たちは、万年筆を使うことを「育てる」と表現しています。
ほかの筆記具ではなかなか使わない言葉ですが、万年筆には最も適している表現なのではないでしょうか。
毎日、同じ万年筆で文字を書いていると、いつの間にか馴染んできて、指先からインクが出ているのではないかと錯覚するくらい、自分の体の一部になってきます。
そんな楽しみを味わえる万年筆、その魅力にどっぷりとはまってみてはいかがでしょうか。
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