1回目ではフランスの高級ワインをご紹介してきたが、ヨーロッパ他国やニューワールドについても欠かすことはできない。
2回目もハイエンドなワインの魅力をご紹介していこう。
前回▶【エキスパートが薦める高級ワイン】VOL.1 高級ワインには理由がある ~フランス高級ワイン~ |
今日のワインに欠かせないニューワールドとは?
世界で良質なワインが生まれており、ヨーロッパに引けをとらないことは既に実感されているだろう。
きっかけとして有名なのは1976年のパリ品評会。名だたる審査員によるブラインドテストでフランスを凌ぎ、赤白共にカリフォルニアワインが首位に選ばれる結果となったことである。これにより今までの歴史神話は覆され、望ましい土地でこだわりをもって作られれば良いワインができることが証明されたのだった。
この結果はフランスにも良い影響だったといえる。クオリティの向上が必然的になされていき、ワインに対する熱意が今まで以上に傾けられたからだ。
各地で可能性が広がったことにより現在は様々な個性を持ったボトルを楽しむことができる。
日本は元来ワイン生産国でなかったからこそ、フラットな見方でワインを楽しめるはず。手軽に入る欧州ワインもニューワールドのワインもお好みのものを見つける楽しみが誰にでも与えられているのだ。
さて、次からはイタリア、ドイツ、スペイン、さらにニューワールドからアメリカ・カリフォルニアのボトルをご紹介していこう。
バローロ・リゼルヴァ・モンフォルティーノ(Barolo Riserva Monfortino)
ピエモンテのメインである品種・ネッビオーロは強い酸味と渋み、豊かな香りをもつ重厚さが際立つ。このネッビオーロを100%使用したバローロ・リゼルヴァ・モンフォルティーノは4度もの100点満点を獲得した実力派。
1974年より自社畑で採れたブドウを使用し、木樽で約1カ月をかけて醗酵。その後、オーク樽で5年熟成、さらに瓶内で1年熟成を行なうリッチな製法といえる。
口に含むとタンニンのしっかりとしたストラクチャーと濃く厚みのあるベリーのアロマ、花の優雅な香りが広がってくる。
長期熟成が楽しみになるボトルでもある。
妥協なき醸造方法から紡がれた一杯でバローロの名門を感じられるだろう。
エゴン・ミュラー=シャルツホーフ リースリング トロッケンベーレンアウスレーゼ(Egon Müller Scharzhofberger Risling Trockenbeerenauslese)
そのような条件を乗り越え栽培されたワインは極上の一滴といえるだろう。
ドイツワインは6割ほどが白ワイン。近年では赤ワインの比率が増えてきているのが特徴だ。バランスが良く、アルコール度数が低めのものもあるので飲みやすいものも多い。
そんなドイツからご紹介したいのは、エゴン・ミュラー=シャルツホーフ リースリング トロッケンベーレンアウスレーゼという長い名前のワイン。1797年に畑を購入し、代々一族で経営してきた長い歴史をもつ。
「良いブドウがあれば人が手を加える必要はない」という信念のもと、天然醗酵をおこなっている。
「トロッケンベーレンアウスレーゼ」は貴腐ワインのこと。ドイツの果汁糖度基準の中でも最高の甘口である。
とろりとした気品のある甘み、酸のバランスが絶妙で白桃のような芳醇な香りが漂う。
わずかでも心が満たされるようなワインである。甘美ながらも澄んだ味わいは冷涼な気候を反映しているようで面白い。
ウニコ(Unico)
スペインのトップワイナリーのべガ・シシリアからこちらのボトルを。
クラシックな製法と近代的な技術を併せてブドウの可能性を最大限に引き出す製法に感性を加えているワイナリーだ。リリースまで最低でも10年の熟成をかけるこだわり。なんと熟成用のオーク樽は自社製というから、そのこだわりは計り知れない。
寒暖差の大きい土地で育まれる樹はたくましく、濃厚なブドウをつくり出し、その様子がワインにも表現されている。深く潜るような凝縮感と十分に熟したタンニンが重厚さを奏でる赤ワイン。強く訴えかけてくるような濃さに刺激的な甘みが独特で威厳を感じるほどである。
重厚さを持ちながらもどっしりとなりすぎず、スッと入ってくるような味わいはスペインならでは。
他の地にはない味わいはウニコの意「唯一」を表すようだ。
スクリーミング・イーグル(Screaming Eagle)
カリフォルニアのカルトワインの頂点にいる存在だ。
ファースト・ヴィンテージは1992年というまだ新しいものではあるが、ワインコレクターが熱意を持って購入するワインである。
テイスティングスコアは常に98点以上。100点を付けられたこともあるパーフェクトな味わいだ。
吸い込まれるような深みのガーネット。濃密で華やかなベリーの香りにセージの爽やかさ、バラやラベンダーの芳しい力強さを醸し出しエネルギッシュな印象が感じられる。複雑さが熟した渋みで一体感をもたらしており、重厚な雰囲気だ。
ヴィンテージ2016は現在日本で60万円ほど。この年のカリフォルニアは気候が最適で優れたクオリティのブドウが収穫されている。
果実味が凝縮され、酸とのバランスが際立った風味が特徴。
これは気軽に嗜むワインではないことがよくわかる。しっかりとした骨格をもつスクリーミング・イーグルはここぞという時に開けたいものである。
◆◆どんな味わいも物理的な距離には敵わない?
日本でも手に入りやすくなった高級ワイン。
ここまでご紹介してきたが、忘れてはならないことがある。それは物理的な距離だ。
ワインは繊細なもの。輸送中の揺れと温度管理がクオリティに影響することは想像難くないだろう。
だからこそ一番推奨すべきは現地で味わうこと。できれば生産者のもとで味わうのが最適である。
昨今は海外に行きにくいご時世かもしれないが、今後の改善を期待するとすれば現在の反動でワイン業界は盛り上がりを見せると思われる。是非その機会に現地で味わってみてほしい。
ワインはラグジュアリーなライフスタイルに欠かせないパートナーだ。
こだわりや嗜好性はそれぞれ。しかし特別なボトルであればその一口に一層喜びを与えるに違いない。
料理とのマリアージュを楽しむ日々のカジュアルワインも良いが、それだけで主役になるような高級ワインは記念日など特別な日に彩りを添えてくれるだろう。
前回▶【エキスパートが薦める高級ワイン】VOL.1 高級ワインには理由がある ~フランス高級ワイン~
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