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フランスのエリート教育に迫る!日本との違いと、世界が注目する教育システム

世界がますますグローバル化し、国境を越えて活躍する人材が求められる時代。しかし、日本と海外で「エリート」とみなされる基準は大きく異なることをご存知でしょうか? 今回は海外エリート教育の代表格であるフランスの教育に焦点を当て、日本の教育との違いや、世界が注目するフランスの教育システムについて深掘りしていきます。

 

 教育の特徴

比較的自由度の高い教育が行われているフランス。

文学や芸術、哲学などにも重点を置き、自己表現や創造性も重視され、自由な発想を養うことを大切にしています。

フランスの義務教育期間は、幼稚園(3歳〜5歳)、小学校(6歳〜10歳)、中学校(11歳〜15歳)の12年間。以前は6歳〜16歳でしたが、未就学児の時に教育を受けられない子供の教育格差をなくすための取り組みとして、20199月から義務教育開始年齢が3歳に引き下げられました。

超学歴社会であるフランスでは、小学校低学年は16時ごろまで、高学年になると18時ごろまで授業が行われます。道徳や生活、家庭科などの日常生活で必要になることは各家庭で学ぶものとし、学校の授業は学問中心です。日本に比べて、成績が自分の将来に大きな影響を与えるフランスでは、学校は学びに行く場所だということを理解し、熱心に学業に励む学生が多いように思います。

しかし、フランスは学校の休みになる日が

  • カトリックの諸聖人の休暇が10月中旬~11月上旬の約2週間
  • クリスマス休暇が12月中旬~1月初旬の約2週間
  • 冬休みが2月上旬~3月上旬の2週間
  • イースター休暇が3月下旬~4月中旬の約2週間
  • 夏休みが7月~8月下旬の約8週間

と、日本よりもはるかに多く、低学年のうちは特に、休みの期間中にそれまで勉強したことを忘れてしまうことも多いようです。自己学習用に市販のドリルも販売されていますが、分厚いものは少なく、休み期間はしっかり休む、というポリシーが感じられます。そういった切り替えも学習に取り組む上で重要なのかもしれませんね。

高校卒業時には「バカロレア(略して“BAC”)」と呼ばれる高校の卒業資格を受験。高校に進学した生徒は、最終学年にこの試験を突破することがかなり重要です。その先の進路は、総合大学、技術短期大学、ビジネススクール、専門学校、グランゼコールなど選択肢は様々。どこに進むにしても、バカロレアから何年勉強したかが仕事探しの目安となります。例えば「BAC2」であれば、バカロレアから2年勉強したことになりますし、「BAC5」であれば、バカロレアから5年勉強したことになります。医者になるためには「BAC9」が必要だそう。このバカロレア、中には断念してしまう人がいるほど、非常に大変なようです。

フランスの学力の高さは?

経済協力開発機構が行っている世界各国の15歳児の学力を測る「PISA(国際学力調査)」では、学歴社会と呼ばれるフランスはいずれも日本よりも下の順位。しかし「15歳の時に賢かった人が、大人になった時にも賢いとは限らない。自分は自分、人は人」といった考えを持つフランス人は、この結果を知っても「それがどうした」というリアクションでしょう。それがフランス人らしさ、なのです。

働きながら学べる教育システム

フランスには「alternance」と呼ばれるシステムがあります。これは、契約を結んだ企業で働きながら、学校で学業に取り組むことができるシステム。学校に通って知識や技術を身につけたいけれど収入が不安であったり、現場で手っ取り早く技術を身につけたい、などといった面に寄り添います。そのため、多くの若者に支持されているそう。また、授業料は実質無料であり、企業側にも将来の就業者の育成や、税金の免除、国からの援助などのメリットがあるようです。学校と出勤のリズムは企業によってもそれぞれ違うようですが、学校に2日行ったら、企業に3日行くなどといった交代制です。1日に学業と就業の2つをこなすわけではないので体力的にも負担が少ないように思います。

フランスの学校とその費用

フランスのエリート校と聞いて思い浮かべる学校のひとつとして「グランゼコール」があります。一般的な入学ルートは高校卒業後2年、3年のグランゼコール受験準備級を経て入試に臨む方法です。しかし、準備学校に入るにはバカロレアで高得点をとり入学条件を満たす必要があり、この時点でかなり厳しい戦いとなります。準備学校に入ることができた学生は、そこから23年の間、グランゼコールの入試のために勉強します。授業は週に約40時間、もちろん宿題もあり、テストや口頭試問は毎週出されるそう。ですが、この準備期間を経ても全員がグランゼコールに合格できるわけではありません。

入試は二回にわたって実施され、試験期間は数週間に及びます。倍率は公表されていないようですが、厳しい戦いであることは明らかであり、23年の間勉強に費やし試験準備をするという制度も納得できるほど。多くのプレッシャーとストレスに耐え、努力し続けた学生のみが入ることのできる特権的な学校がグランゼコールなのです。また、グランゼコールに入ることのできなかった学生は一般的な大学の2年もしくは3年に編入する仕組み。フランスの公立学校の授業料は無料ですが、グランゼコールの学費は高額で裕福な家庭の子供でないと入学が難しいといわれています。

 

いかがでしたか。

フランスでは家庭における学校教育費と学校外活動費の負担を減らすため、国家予算の多くを教育に当てています。新学年度に経済的な支援が必要な家庭には「新学年手当」が給付されるそう。

また、フランスの教育の特徴や、なかなか複雑なグランゼコールなどについても理解していただけたかと思います。時代の移り変わりに合わせて変化していくといわれるフランスの教育制度。日本よりも成績が将来に大きく影響するからこそ、熱心に学業に励む学生が多いのかもしれませんね。

 

Text by yumeka