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アメリカの教育制度:多様性を尊重し、個性を伸ばすシステム

集団教育や偏差値の重視はもう古い!? 個人の得意分野を伸ばし、個々の感性や興味によって才能を開花させることが重要視される多様性の現代。日本の教育制度も変革が求められています。そのヒントとなるのが、世界各国の教育制度です。本記事では、アメリカの教育制度について詳しくご紹介します。

アメリカ・テキサス州にあるサザンメソジスト大学のキャンパスにある歴史的な建物ダラスホール 

 

アメリカの教育制度の特徴

集団での協調性などが重視される日本と違い、個々の権利や自由が尊重されるアメリカ。それは、教育面にも大きな違いをもたらします。日本は全国共通のカリキュラムやテストを実施しますが、一方アメリカは、自分の興味・関心や能力に応じたカリキュラムを選択できるのです。

それでは、アメリカの教育制度を6つのカテゴリに分けて見ていきましょう。

①教育制度の特徴

②教育課程

③教員免許制度

④学校評価制度

⑤教育費

⑥教育課題

①教育制度の特徴

アメリカの教育制度は各州の裁量によって決まり、各州に「教育省」、郡に「教育局」、学校区に「教育委員会」が設置され、中でも「学校区」の裁量が大きく影響します。

「学校区」が、義務教育の年限から小中高の就業年限、カリキュラム、教科書、休日などを決めるため、地域によって教育レベルが異なります。子を持つ親の中には、教育レベルによって住む場所を決める人もいるようです。

また、アメリカでは学校に通わずに家庭で教育を行う「ホームスクーリング」が認められています。ホームスクーリングは、保護者が教育を行う、家庭教師に一任する、一部の教科は学校で受ける、といったさまざまなパターンを選択することが可能です。「不登校」や「登校拒否」の児童が増えている日本にとって、この教育方法にネガティブなイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、多様な学び方を認めるアメリカには不登校といった言葉は存在せず、家庭や個人の事情に合わせて教育を受けることができる合理的な方法のひとつなのです。

②教育課程

アメリカでは、学年のことを「K」もしくは「グレード」といい、日本で例えると、幼稚園年長がK、小学1年生から高校3年生までの12年間をグレード1〜12で分けます。その12年の分け方も州によって異なりますが、一般的にグレード1〜5が小学校、グレード6〜8が中学校、グレード9〜12が高校で、この13年間を「K-12」という言葉で表します。最近は幼児教育から大学教育までを表す「K-16」という言葉も注目されているようです。

また、個人の学力によって、学年の上がるタイミングが変わってくるので、年齢の割に学年レベルが上であったりする場合(飛び級・アクセラレーション)制度もアメリカでは珍しくありません。

③教員免許制度

日本では、教員採用選考試験に合格すれば全国で教師として働くことができますが、アメリカでは、教員免許を取得した州でしか教師として働くことができません。引っ越しなどで、他の州で教師をすることになった場合は、新たにその州の教員免許を取得する必要があります。また、免許は更新制で、更新年月も州によって異なるようです。

④学校評価制度

日本では、大学ごとに評価の基準が決まっていますが、アメリカでは評価の基準が、「GPA(Grade Point Average)」と呼ばれる成績評価で統一されています。AFのアルファベットを使って評価され、それに準じてポイントが付与される仕組みです。高いGPAを維持することで、奨学金の申請がしやすくなったり、大学院への進学の幅が広がったり、就職したい企業先へのアピールにつながります。

アメリカの大学への留学を考えている場合は、成績の付け方に大きな違いがあることを理解し、課題やテスト対策を十分に行うことをおすすめします。

⑤教育費

K-12」の義務教育段階である公立学校の学費は全て税金で賄われ、原則無償です。一方で、アメリカの大学は高額なことで知られています。「私立大学」「州立大学」「コミュニティカレッジ」に分類されますが、中でも私立大学は年間で約600万円もの学費がかかるといわれています。また、州立大学は年間で300万〜400万円ほど。コミュニティカレッジは2年制で、平均年間120万円程度です。コミュニティカレッジは卒業後、州立大学に編入することも可能で、その場合は600万〜800万円の学費を追加し、学士号を取得できます。

⑥教育の課題

アメリカの教育課題として第一に挙げられるのは「格差」。

自由の国であるアメリカでは、さまざまな教育方法や選択肢があり、地域によって教育の質が全く違います。教育に熱心な地域の学校では、先進的な教育など質の高い教育を受けることができますが、教育に関心がない地域では、質の高い教育を受けることが難しいようです。教育にかかる金額はその地域の税金で賄われているため、富裕層が多く住む地域の学校は質が高い傾向にあります。

また、コロナウイルスにより学校で授業ができなかったため、教育格差が広がりました。オンライン授業を受けるには、家庭にWi-Fi設備を揃えなければなりません。しかし中には、Wi-Fi環境を整えることができず、授業を受けることができなかった生徒もいたようです。

才能さえあれば尊重され成功者になっていく人がいる一方で、貧困に苦しんでいる人もいるというのが現状でしょう。

 

まとめ

さまざまな選択肢の中から自分にあった道を進んでいくことができるアメリカ。集団教育を行う日本にとっては驚くことばかりだったのではないでしょうか。

国が違えば教育方針も大きく異なります。それぞれの優れた点と、改善すべき点を考え、日本の教育がますます素晴らしいものになって行くことを願うばかりです。

 

 

Text by yumeka