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韓国の教育制度:日本と比べて何が違う? 徹底解説

ドラマやK-POPの影響で、日本から近く、文化も似ていることから、留学先としても人気が高まっている韓国。そこで今回は、韓国の教育制度について、義務教育から高等教育まで詳しく解説します。日本と異なる点や、韓国が抱える課題なども紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

韓国の教育制度

Webメディアや雑誌の見出しには「韓国トレンド」や「K-POPアイドル」などといった話題が尽きず、ひと昔前よりも韓国に憧れる人が多く見られるようになりました。日本から一番近い国ということもあり、旅行先としても人気があります。また、さまざまなコンテンツの影響で韓国語を本格的に学びたいという人も多く、留学先として選ぶ人も増えてきました。

それでは、下の6つのカテゴリ別に韓国の教育システムを見ていきましょう。

①教育制度の特徴

②教育課程

③教員免許制

④学校評価制度

⑤教育費

⑥教育課題

①教育制度の特徴

 

日本同様の6-3-3-4年制が採用され、義務教育期間は6歳から15歳の9年間。学歴社会である韓国の大学進学率は95%以上で、日本の57%を大きく超えています。有名なのは日本のセンター試験にあたる「スヌン」ですが、遅刻しそうな受験生を白バイで送り届けるというニュースが日本でも取り上げられました。中学や高校の受験制度がない韓国の学生にとっては、大学入試こそが自分の学力だけで勝負できる人生で一度きりの大きなチャンスであり、結果次第で将来が変わってしまう一大イベントなのです。しかし、男子学生は軍隊への入隊のため大学2年生の時に休学します。兵役後は大学に戻りますが、授業についていけなくなることを考え、勉強のために休学期間を延ばす学生も珍しくありません。

②教育課程

 

韓国には国公立や私立の保育園、法人や団体が運営する保育園、職場内の保育園、家庭保育園などがあり、園児数は10人以下〜100人以上のところまでさまざま。人気が高いのは国公立保育園で、出生届と同時に保育園への入園を申し込む人も少なくないとか。また、韓国では複数棟のマンションが建設されることが多く、住戸数が一定数以上になると保育園の設置が義務付けられます。そのマンションの一室に設けられているのが、韓国特有ともいえる家庭保育園。住民はエレベーターひとつで移動でき、天気が悪い日にも楽に登園できることや、小規模ゆえ目がよく行き届くというメリットもあるようです。

日本でいう小学校にあたる初等教育は、日本と同じ6年制であり、生活習慣や基礎的な学問を学びます。日本と異なる点は、卒業式が2月末、新学期は翌月の3月からスタートであるということ。4月スタートの日本ではその年の4月生まれ〜翌年3月生まれまでが同学年ですが、韓国では1月〜12月生まれが同学年になります。

小学校を卒業した後は、中等教育という日本でいう中学校にあたる学校に進みます。韓国は、私立高校などの特殊な高校でない限り、高校受験はありません。そのため中等教育の3年間はゆっくり過ごせるのでは?と、私たち日本人は思ってしまいますが、高校の進路が3年間の内申成績で決まるため、ほとんどの子供たちが塾に通い始めるほど勉強に力が入ります。

次に高校ですが、内申書、出席率などの点数をもとに、それぞれの高校のレベルが平均になるように振り分けられます。またその際、通いやすさなど自宅からの距離も考慮されるそう。その中で受験が必要な高校は私立以外に、特殊な才能を伸ばすためにその分野に特化した学生を集めて教育する「特殊目的高等学校」です。また、一般的な高校でも3年生になると、21時ごろまで学校に残って勉強するのが当たり前になり、夕食も学校で給食が出されることもあるとか。韓国の部活動も趣味としてたしなむ程度で、学生は「勉強第一」という方針のようです。

最後に大学ですが、韓国では国を挙げて大学受験を応援しています。有名なのは日本でもたびたびニュースで取り上げられている日本のセンター試験にあたる「スヌン」ですが、大学が独自に行う推薦入試やAO入試などの受験方法もあるようです。学歴社会が根強く残る韓国では良い大学を卒業し、良い会社に入り、安定した生活を送ることが人生の目標といっても過言ではなく、幼い頃から教育機会を惜しみなく与えている家庭が多くみられます。そのため、高校卒業後の大学進学率は短大や専門学校を含めると9割以上を占めるそうです。

③教員免許制度

 

韓国の教員資格は、学校段階に応じて教員資格が区別されているため、初等学校の教員になる場合は初等学校の教員資格、中等学校で教員をする場合は中等学校の教員資格が必要です。校長や教頭などの職に就きたい場合は、一般教員の資格を取得した後、研修を受けながら段階的に昇格していきます。

将来就きたい職業として韓国国内で人気の高い「教師」。仕事熱心な人が多い韓国ですが、プライベートも同じくらい大切にする人が多いので、夏休みや冬休みなどまとまった休みが取れる教師という職業は魅力的なのかもしれません

韓国で日本語教師になるためには、日本の4年制大学を卒業し会話指導のビザを取得して、日本語教師養成講座420時間修了、または日本語教育能力検定試験の合格などが求められます。

④学校評価制度

評価には、集団内でどのような順位にあるかという相対的な位置をもとに、個人の能力に対する評価を行う「相対性評価」と集団内での順位にかかわらず、個人の能力に応じて評価する「絶対性評価」という大きく分けて2つの評価制度があります。日本では内申などの相対性評価よりも、成績などの絶対性評価を重視している学校が多いように思いますが、一方韓国では、公平な評価のために相対性評価を積極的に取り入れる傾向があるようです。

また、日本では受験の際に模擬試験を受け自身の偏差値を把握した後、学校を決定する方法がほとんどですが、韓国では偏差値の代わりに「等級制度」を用います。等級制度とは、全体を割合ごとに上から順に1〜9等級に分ける方法です。

成績が良いだけでは評価が上がらない韓国。学生のうちから競争社会を生き抜く強さを磨いているのかもしれません。

⑤教育費

日本同様に、公立小中学校の教育費は原則無料。中には、教材費や給食費なども無償の学校があるようです。一方で、インターナショナルスクールや日本人学校などを含めた私立学校の学費は高額になります。私立学校でも、年間日本円で約25万〜100万円と金額に差があるようです。学歴社会の韓国では、少々無理をしてでも子どもを私立に通わせたいという教育熱心な親も少なくありません。理由は小学校1年生から週に10時間を超える英語の授業があるなど教育の質が高いことや、課外活動やイベントが多いということが挙げられます。ちなみに、日本人学校に入学するためには保護者が韓国に駐在していることが条件になるようです。

⑥教育課題

 

韓国の教育課題として挙げられるのはやはり学歴社会であるということ。受験戦争が過熱し、塾漬けの日々に子供たちは大きなストレスを抱えているのではないでしょうか。2023年にはユン・ソンニョル大統領が「学校教育の課程で扱わない分野の問題は、大学修学能力試験から排除すべき」と、教育業界からキラー問題といわれている超難題を排除する方針を打ち出しました。このことについて賛否は分かれているようですが、塾通いを過熱させる一因を少しでも減らす対策になったように思います。近年では、学歴社会から離脱しようと考える人も多いようで、韓国政府が今後どのように舵を切っていくのか気になるところです。

 

いかがでしたか?

韓国は日本から一番近い海外で、6-3-3-4年制が採用されているなど、日本と似ている点もあるようですが、国を挙げての受験など日本では想像できないことも多々ありました。今後もさまざまなコンテンツの影響で、韓国に行きたいという人が増えるかもしれません。その際は、似ているようで似ていない文化の違いにも注目してみてくださいね。

 

 

Text by yumeka