中国の教育制度は日本と似ている部分もありますが、独自の進化を遂げています。近年では経済発展に伴い、教育格差や受験競争の激化など、課題も浮き彫りになってきました。本記事では、中国の教育制度について詳しく解説していきます。
教育格差が浮き彫りに 中国の教育制度
中国全体の教育制度は、教育部と呼ばれる中央政府機関が統括しています。しかし、中国国内の経済的な格差が大きいことから、修学年限などはその地域に裁量を委ねているそうです。そのため、基本的に日本と同様6-3-3-4年制が採用されていますが、農村部や先進的な教育の実験校などでは、小学校5年間、中学校4年間の5-4-3-4年制を採用しています。
それでは、中国の教育制度を6つのカテゴリに分けて詳しく見ていきましょう。
①教育制度の特徴
②教育課程
③教員免許制度
④学校評価制度
⑤教育費
⑥教育課題
①教育制度の特徴
また、中国の教育といえば激しい受験戦争をイメージする方も多いのではないでしょうか。その激しさは、日本でもたびたびニュースに取り上げられるほど。特に普通高等学校招生全国統一考試、日本でいうセンター試験のような受験が実施される6月は「黒色六月(暗黒の6月)」と呼ばれています。
②教育課程
小学校の多くは公立学校で、日本と同じように住む場所によって通う小学校が決まり、入学の条件は学区内の戸籍と、学区内の不動産の所有になります。中には「重点小学」という学力の高い子供が通う小学校に入学させたいという親もおり、その場合は重点小学がある学区にわざわざ不動産を購入することもあるそうです。ちなみに、重点小学の学区は「シュエチーファン」と呼ばれ、不動産価格が非常に高額。一方、私立小学校に入学を希望する場合は、日本同様に入学試験と面接が行われることがほとんどです。
また、中国では7時間授業が普通であり、たとえ早く授業が終わったとしても課題の多さゆえ、そのまま机に向かう子どもたちがほとんど。日本では考えられない光景です。中国の小学校には飛び級や落第があるので、学業において手を抜くことは許されません。日本と同じ義務教育期間にもかかわらず飛び級や落第があるのは、中国らしい弱肉強食の世界が垣間見える瞬間ではないでしょうか。
小学校同様に中学校も公立の場合は、受験などはなく、学区で入学する学校が決まります。もちろん私立学校への入学を希望するなら、入学試験を受けなくてはなりません。ここですでに激しい受験戦争が繰り広げられているのです。富裕層の集まる都市部では、小学校以上に学業に力を入れる家庭が多いようですが、農村部では教育にお金をかけることができない家庭が多く、金銭的事情で退学を強いられる学生もいるのが実情です。
中学卒業後は、3年間の高級中学・4年間の中等職業学校・3年間の労働者学校・2〜3年の職業訓練高校を選択し進学します。全体の60%は日本でいう普通高校である高級中学へ進学するそうです。
続いて大学ですが、進学率は50%ほど。日本の大学進学率が57.7%なので、迫ってきているといえるでしょう。人気が高いのは中国政府より権威のある大学と認められている国家重点大学(中国全土に110校ほどある)です。予算を優先的に配分されるので、施設充実度も高く、最先端のテクノロジーの導入や高度な研究なども行うことができるそう。中国の大学進学を目指す場合は、国家重点大学を中心に勉強するのがいいかもしれませんね。
③教員免許制度
④学校評価制度
⑤教育費
中国の公立学校では、義務教育期間の授業料は無料です。しかし、学区ではない学校を選んだ場合、手続きに費用がかかります。他にも、給食や補習の受講料、スクールバス、学童保育、その他雑費などがかかることもあるようです。また、日本人は中国の公立学校に入ることが難しく、日本人学校もしくはインターナショナルスクールに通います。
⑥教育の課題
中国では都市と地方の経済格差や、根強く残る学歴主義の問題などから教育格差が問題とされています。経済格差が大きい要因のひとつに、1950年後半に都市化が進み、人口流入制御のために導入された「戸籍制度」があります。この制度により、農民戸籍の人は自由に都市部に行き来することができなくなりました。医療や社会保障などの行政サービスにも違いがあるため、近年では戸籍の変更ができるようになりましたが、変更するには様々な条件があり簡単なことではないようです。また、大学の学費も都市戸籍の学生よりも割高であり、農民戸籍の学生が大学に入るには圧倒的に不利というわけです。
いかがでしょうか。
日本では公平さが重んじられ、客観的背景で差別があってはならないとされています。中国では日本ほど「公平さ」が重要ではないかもしれません。貧困問題はSDGs目標にもあるように、全世界でも早急に解決すべき問題とされています。貧困撲滅が中国の教育格差を解決する鍵になるような気がしてなりません。
Text by yumeka