客を思い、趣向を凝らして腕を振るう
前編:“五味五色五法”を味わう革新の一皿。「すし験」<前編>
秋枝氏の技術と思考が具現化された、至極の一皿がお目見えだ。
長時間煮込んだアワビは、驚くほど柔らかい。コリコリとしたアワビから噛めば噛むほど煮汁が滲み出てくるこの幸福感は、しばらく目を閉じてじっくりと堪能したくなるほど。控えめに盛られたホウボウは、昆布締めにしてあるため身がもっちりとふくよかに。芽ネギを巻いているおかげで口の中で豊かな食感を生んでくれる。車海老やあしらいの野菜は、2つの食材を引き立てるよう、あえてシンプルに。裏ごしした白子とポン酢を合わせたソースたっぷりと絡めれば、また全体としての調和も完璧だ。
まさに五味五色五法に則りつつも個性が光る、秋枝氏らしい一皿と出合うことができた。
料理と向き合うにあたり、とにかく客が喜ぶことを念頭に置いていると秋枝氏は話す。
「仕込みの段階から、もっと言えば予約の段階から。何度来ても飽きないように楽しんでいただけるように流れを考えたり、工夫を凝らしたりしています。自分が出したい料理を、というよりはお客様がここで気分良く過ごしていただけることがうれしいですね」
と、あくまで控えめだ。
その心配りと、ここでいただける寿司や一品を鑑みれば、同店にリピーターが多いのもうなずける。
落ち着いた空間でのびのびと寿司を堪能させてもらった。心地よいもてなしを受け、いささか足取りも軽い。しっとりと酔いしれる大人の夜が、更けていく。
<店舗情報>
すし験
052-211-7722
名古屋市中区丸の内3-10-8 LIBERTA CARINO 1F
18:00〜24:00(L.O.23:00)
日・祝休
※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。
前編:“五味五色五法”を味わう革新の一皿。「すし験」<前編>