炉窯ならではの、新たな味わいを楽しみに
素朴な旨味を窯で味わう贅沢。「窯焼きステーキTAKIBI(焚火)」<前編>
赤々と滴るような肉の登場に、心が躍るのがわかる。
「肉質の異なる2種類を堪能できるように」との心配りで、山形牛のヒレと知多牛のランプを用意していただいた。
まず、向かって右側、ヒレ肉を切り分けてみる。
細かく入ったサシがじんわりと溶け出しているおかげか、生産者のこだわりがなせる業なのか、ナイフがスッと入っていくのにまず驚く。
ほとんど圧力をかけずに切れてしまったそのひとかけらをゆっくりと口に含むと、口腔内の温度でとろけてしまうほど柔らかい。そして甘いのだ。
口の中にその余韻を残しながら、次はランプ肉を味わってみる。
ランプといえば濃厚な旨味が特長的な赤身肉だが、炉窯で焼き上げているため旨味が逃げておらず、ジューシーさが際立っている。
2つの味わいがこうも違うものかと感心していると、いい頃合いでワインがサーブされる。なるほど、シャトーマルゴーの2016年。
その香りの華やかさと口当たりの滑らかさゆえ、5大シャトーの中でも最も女性的なワインだ。
そっと舌の上に送り込めば、肉の味わいを消すことなく、フローラルな余韻で包み込んでくれる。
2つの異なる窯焼きステーキと、魅力的なワイン。
なんと幸せな夜だろうか。
添えてある野菜も、それぞれに味を主張する。
生産者のもとを訪れ、自身で目利きしているだけあり、食材の魅力をうまく引き出しているのがわかる。
ちなみに、ここでは肉や野菜にソースの類は用いず、燻製にした塩や生わさび、生粒胡椒などシンプルな調味料で味わう。
そうすることで素材の食感や歯触り、水分や甘味などを繊細に感じられるからだ。
「窯焼きステーキ、というジャンルを確立させていきたいですね。
炉窯ならではの調理法で素材の魅力を広めていけたら」と、青木氏は話す。
素材を選ばず、余分を削ぎ落とした格別な味わいに仕立てる炉窯での調理と、
青木氏の腕があるならば、同じ素材でもいただくたびに新たな発見があるだろう。
これからも訪れる楽しみが、また一つ増えた。
身も心も解きほぐされ、店を後にする。名古屋駅に灯った小さな“焚火”は、こうして忙しい大人たちの心を温め続けるのかもしれない。
<店舗情報>
窯焼きステーキTAKIBI(焚火)
名古屋市西区名駅2-23-14 VIA141 1F
052-564-8131
17:00〜23:00(L.O.21:30)
火曜休
https://www.kamayaki-takibi.jp/
※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。