過ぎゆく人がみな肩をすくめて歩く、夕方の名古屋駅。
家族の待つ家路を急ぐのか、仲間の待つ職場へ向かうのか、はたまた、想い人との待ち合わせか。
人の数だけドラマはある、とはよく言われるが、名古屋駅にいるとそんなことを強く思う。
とかく、大人になれば日々いろいろあるというものだ。
ひとりで自分と向き合いたい時、誰かと楽しく過ごしたい時。
あの店は暖かな火を灯し続けながら、名古屋の大人を待ってくれているに違いない。
フランスの白土でできた窯で、素材をじっくり焼き上げる
名古屋駅を北へ徒歩6分。中心地の賑わいを遠巻きに感じながら「窯焼きステーキTAKIBI(焚火)」のドアを開ける。
5席のカウンターは幸い空いていた。今日は一人でここにいたい気分だ。
友人や仕事仲間、大切な人と訪れるときは、テーブル席や個室を利用する。
シーンや気分によって席を使いわけられるのはありがたい。
どの席に腰を据えようとも、視界には窯が映る。
静かに炎を揺らめかせながら、食材を焼き上げていく店自慢の炉窯だ。
吸臭性にすぐれたフランスのラルナージュ白土でできており、最高温度は約400℃。
肉も魚も野菜も、遠赤外線で素材の旨味を閉じ込めたまま調理してくれる優れものだ。
漂い始めるおいしそうな香り。パチパチと炭が割れる音。店内を包むあたたかな一体感。そうだ、この感じが好きなのだ。
“焚火”を囲んでみなで語らいあっているような、心が安らぐこの感じが。
あえて、この窯の“相棒”とも言おうか。料理長・青木大介氏の仕事ぶりが間近に見られるのも、カウンター席のメリットでもある。
彼の手際を見るのが、好きだ。そのやさしい手さばきに、食材への愛情を感じられるからだ。
20歳から料理の道を志し、洋食や製パンなど専門的な経験を積んだ青木氏。
イタリアのジェノバへ渡ってからはミシュラン1つ星の名店でも修行をした。
各地での経験で学んだのは、食材を大切にすること。
自ら足を運び、生産者の思いやこだわりを聞くことで、食材のストーリーごと客に伝えているのだ。
この店では、その日に仕入れた異なる銘柄や部位の牛の中から、メインのステーキを好みで選ぶことができる。
ランプか、ヒレか。近江牛か、薩摩の黒牛か。
いや、あまり迷うのも野暮というもの。
ここはひとつ、炉窯と青木氏に任せてみることにしよう。
<店舗情報>
窯焼きステーキTAKIBI(焚火)
名古屋市西区名駅2-23-14 VIA141 1F
052-564-8131
17:00〜23:00(L.O.21:30)
火曜休
https://www.kamayaki-takibi.jp/
※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。