和洋が融合する美食の庭。名古屋市東区「ガーデンレストラン徳川園」<前編>
地元の食材を生かし、作り手の思いを表現する
「キタムラサキ雲丹 ウッフブイエ イラコファームの卵 夏トリュフ 知多美浜の塩」
温菜として供されたのは、小栁シェフの一皿。
黒い器に竹炭、そしてキタムラサキ雲丹と、シックなブラックのコーディネートに、現代的なスタイリッシュさを感じる。
「ウニの黒を引き立たせるために、あえて黒い器を選びました」と話すあたり、
数々の現場で美的センスが磨かれてきたことが窺える。
その中に、美浜の塩の白とウニの黄色が負けていない。
料理全体をうまく引き締め、視線を誘導している。
ウニの下には、丁寧に煮出した鶏のスープと玉子を使ったスクランブルエッグが隠れている。
「フランスの『Abri』時代に習ったレシピです。
今の自分があるのも、フランスでの経験があったからこそ。そこに、自分らしさを表現しました」と小栁シェフ。
塩やウニ、卵は愛知県産のものを使用した。
地産地消を心がけつつ、客にも地元の食材に触れてほしいという思いが感じられる。
「郡上鹿の朴葉焼き コンソメ 蕎麦の実 ササゲ ツルムラサキ 宝山味噌」
続けて、山田総料理長の肉料理。
厚く盛られた鹿肉の豪快さもさることながら、器にあしらわれた木や松ぼっくりにも驚かされる。
岐阜県の『明宝ジビエ』から仕入れる鹿は、繊維にストレスをかけないよう火加減に注意を払いながらロースト。
「ハンターさんの仕留め方がうまく、クセがなくて柔らかいのが特長です」と山田シェフは話す。
脂の乗りも申し分なく、鮮度の良さは目でも十分にわかるほどだ。
朴葉に火をつけ、香りを肉にしっかりと纏わせたら、その味わいはより深くなる。
伝統野菜である十六ささげや蕎麦の実、宝山味噌が盛られたプレートに肉を取り分け、
ソースをかけていただくのだが、このソースがまたいい仕事をしてくれる。
鹿の骨とスネ肉のミンチからとったコンソメスープをベースに、肉に合うように調味した手間のかかった至高の味わい。
素材を無駄に扱わず、一皿にまた完結させる。山田シェフが惚れ込むフレンチの魅力が凝縮されている。
「飾りも含めて、料理全体で郡上ののどかな山里を表現しました。
自分が現地に訪れて感じたありのままです。風土を感じながらお召し上がりください」との言葉を聞けば、
なるほど、その様子がありありとまぶたに思い浮かぶ。
料理人として素材に向き合う時、そこにはどんな思いがあるのだろうか。
「生産者さんの思いを大切にしています。私たちはどんな素材でも、できる限り現地へ訪れて、生産者さんとお話をします。
そこで得た着想をもとに表現することを心がけています」と山田シェフは話す。
今回2人が手掛けた料理にも、それはしっかりと現れている。いただく側として、そこに真摯に敬意を払うべきだろう。
「当店では、ワインとのペアリングにも力を入れています。
素材の現地視察にはソムリエも同行するので、きっと今までにない極上の相性を感じていただけるのでは」と小栁シェフも付言する。
生産者、料理人、ソムリエ。彼らの思いをじっくりと感じながら味わいたい。
<店舗情報>
ガーデンレストラン徳川園
愛知県名古屋市東区徳川町1001
052-932-7887
11:00 - 15:00(L.O.14:00)、17:00 - 22:00(L.O.20:00)
不定休
※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。