NOVEL

2番目の女 Vol.1 ~既読にならない週末~

 

 

電車を降りて向かったのはホテル。もう私は、家にすら呼んでもらえない存在となってしまったのか。

ホテルに入ると、急に抱き締めてくる翔太。久々に感じる温もりは、皮肉だけど居心地が良かった。

 

やっぱり、私は翔太が好きなんだ。

 

ベッドに沈む2人の体。室内に響く2人の声。そして、体全体で感じる大好きな相手。1番じゃないのは分かっている、それでも幸せだった。

例え2番目だったとしても、体しか求められなかったとしても、この瞬間だけでも必要とされているのだから。

1番目の女に昇格できる可能性が全くないというわけでもないし。

でも、そんな都合が良いことばかりを考えていた私に、衝撃の一言が告げられた。

 

「俺さ、今の彼女と同棲してるんだよね。結婚するつもり」

 

私は頭の中がパニックになった。現在地は、ラブホのベッドの上。しかも相手は浮気相手。状況を理解するのに時間がかかった。

 

じゃあ何で私を抱いたの?

結局私のことをどう思ってるの?

自分のこと最低だって思わない?

 

頭の中で次々に出てくる文句。だけど、1番ムカつくのはそれを知っても翔太を好きなままの自分。

必死に作った笑顔で、こう言うしかなかった。

 

「そっか、おめでとう」

 

それからというもの、定期的に翔太から連絡が来るようになった。内容は大体同じ。

 

「今日彼女がいないんだけど、友梨ちゃん家に泊まり行って良い?」

 

その文章を見るたびに部屋を綺麗に掃除して、ご飯を作って、精一杯の笑顔で迎えてた私。

どれだけ滑稽だったのだろう。もう私には、手に入らないのに。

 

人づてに聞いた話だと、翔太は学生のうちに婚姻届を出したらしい。公にはしていなかったけど、仲が良い友達には話していたみたい。私は聞いていないけど。

いつの間にか、私は浮気相手から不倫相手になっていたのだ。しかも知らないうちに。

 

私は結婚しているという話を聞いてから、翔太とは会わないことを決めた。

もうこれ以上一緒にいても、意味がないと悟ったから。翔太と一緒にいても、幸せになれない。

私はどんなに頑張っても、2番目の女なんだから。

 

 

私は翔太との関係を絶った寂しさを紛らわすため、就職活動に精を出した。

おかげで、第一志望の企業から内定をもらうことができた。ちなみに翔太も、第一志望の大手メーカーに内定をもらったらしい。

 

就職が決まった後も翔太からの連絡は絶えなかったが、私は徹底的に理由をつけて断った。

それでもブロックすることができなかったのは、まだ好きだったからなのかもしれない。

でも断り続ける私を見て察したのか、徐々に翔太からの連絡はなくなっていった。

結局卒業式まで会うことはなく、卒業式も挨拶程度の会話を交わすだけで終わった。

 

私が卒業したのは大学だけではない。「2番目の女」からも卒業したのだ。

これからは、自分が幸せになれる道だけを選ぶ。そう決意した。

 

これがまだ、不幸の前兆に過ぎないなんて、想像もしていなかった…。

 

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 第一希望の企業に就職が決まり充実した日々を過ごす友梨。ある日友梨のところに一通のハガキが届く。