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イギリスの教育制度:義務教育から大学進学まで徹底解説

イギリスの教育制度は日本と大きく異なり、高校がない点や能力や興味に応じた科目選択、大学進学重視といった特徴があります。本記事では、イギリスの教育制度を6つのカテゴリに分けて解説します。

やや複雑なイギリスの教育制度

イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの国から構成される連合王国イギリス。国ごとに義務教育期間の年齢が違うなど、それぞれが独自の教育制度を持つ、若干ややこしいシステムが特徴です。詰め込み教育が主流の日本とは違い、基本的に問題の答えをひとつに限定せず、正解に至るまでのプロセスを大切にします。試験のほとんども選択式ではなく、自分の考えを書く記述式が多いそう。詰め込み教育が問題視されている日本ですが、イギリスのように思考力を高める教育方法を取り入れてもらいたいものです。

それでは、イギリスの教育制度を下の6つのカテゴリにわけて見ていきましょう。

①教育制度の特徴

②課程

③教員免許制度

④学校評価制度

⑤教育費

⑥教育課題

①教育制度の特徴

 

スコットランド、ウェールズの義務教育期間は、5歳〜16歳、北アイルランドは4歳~16歳。イングランドは若者の失業率の上昇や、若年者が就労・就学しない問題への対応として、2015年に義務教育期間を18歳まで引き延ばしました。

公立学校ではカリキュラムに従って、義務教育期間を4段階に分けています。

key Stage1:4、5歳〜7歳

key Stage2:8歳〜11歳

key Stage3:12歳〜14歳

key Stage4:15歳〜16歳

イングランドのみ16歳〜18歳まで継続教育があり、通学するだけでなく職業訓練や、インターンシップのような制度を利用して働くこともできるようです。

また、小中学校の教育課程の基準として「ナショナル・カリキュラム」があります。このカリキュラムに基づいて学習できる場合のみ、自宅学習「ホームスクーリング」が認められているようです。少数派ではありますが、自分のペースで勉強ができるのは、ホームスクーリングの最大のメリットなのかもしれません。

②教育課程

 

前述したように、公立学校ではカリキュラムに従って義務教育期間を4段階に分けています。4段階に分けられる前の3歳〜4歳はNursery (ナーサリ―)で、言語やコミュニケーション、豊かな表現力などを学びます。教育の基盤となる重要な段階です(義務教育ではないので有料)。

key Stage15歳~7歳)」と「key Stage28歳~11歳)」では、英語・算数・理科・歴史・地理・音楽・体育・技術・芸術・現代外国語と、学校によっては人種や多様性などについて学ぶ市民教育にも取り組みます。key Stage12は、複数のテストと評価が連動するようです。またkey Stage2では、習得度を測るため「SAT」と呼ばれるテストを行います。

key Stage312歳〜14歳)」では、先ほどの科目に加えて、宗教教育と性教育を学びます。保護者は、授業の全体または一部を履修しないよう依頼することも可能だそう。

key Stage415歳〜16歳)」は必修科目が3科目と、カテゴリ別の選択科目を選び勉強します。一般的には、必修科目と選択科目で9〜10の科目を勉強するようです。2年間の学習後、選択した科目で「GCSE」と呼ばれるテストが実施されます。この「GCSEは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドで行われる統一学力試験です。進学や就職する際、このテストの成績が重要になります。イギリスは日本と違い、高校がありません。key Stage4を終えると大学に進学するか、専門学校に入るか、就職するかを選ばなくてはなりません。

大学進学希望者は「シックスフォーム」と呼ばれる進学準備教育課程へ。シックスフォームでは、大学で専攻する予定の専門分野の基礎知識を問う試験を行います。その試験と、GCSEの結果を提出し大学進学の合否が出るシステムです。

③教育免許制度

 

日本で教員になるためには、教員養成課程を持つ大学もしくは短大に進学し、教員免許状を取得した後、教員採用試験に合格すれば教員になることができます。しかしイギリスでは、学士を取得した後「PGCEPostgraduate Certificate in Education)」という資格を取得しなければなりません。

④学校評価制度

 

イギリス国内の教育機関は「Ofsted(オフステッド)」と呼ばれる教育水準監査局が密接にかかわってきます。「Ofsted」は「Office for Standards in Education」の略であり、教育機関は下記の5段階で評価されます。

☑Outstanding(とても良い)

☑Good(良い)

☑Adequate(適切)

☑Requires improvement(改善を要する)

☑Inadequate(不十分、閉校が求められるレベル)

監査は教師の指導や教育の質、差別への取り組みや地域社会との連携など多岐にわたる監査項目があるようです。また、生徒の学力や、授業中の発言意欲、積極性も重要になってきます。監査中は、保護者が匿名で学校に対する問題点や要望をOfstedに伝えることができる風通しの良さも特徴です。

監査結果は、オンラインで全世界から検索し閲覧できるので、学校選びに欠かせない情報となります。自身の子供が通う学校の評価が落ちると、住んでいる地域以外に引っ越す家族もいるほど、注目度が高いようです。

またイギリスでは、すべての大学において共通の基準で成績が評価されます。イギリスの学部課程の成績は、First Class (1st)、Upper-second Class(2:1)、 Lower-second Class (2:2)、Third Class (3rd)、 Fail の5段階。多くの学生は就活でリードするために、とにかく2:1を目指すようです。

⑤教育費

 

イギリスの子供たちはほとんど公立学校に通っていますが、イギリス国内には公立学校、グラマースクール、私立学校などがあります。グラマースクールは、日本でいう公立の中学校・高校で、私立の名門校と肩を並べる進学校です。一気に大学進学への安定した道が開かれ、教育費も無料ということもあり、年々人気が高まっているとか。しかし、グラマースクールに入学するためには日本でいう小学校6年生の時に、「イレブン+」という試験を受けなくてはなりません。合格率は5%前後であり、狭き門だということがわかります。

その他、イギリスには主に富裕層の子供が全世界から集まるボーディングスクール(全寮制のインターナショナルスクールのような学校)もあり、1年間に500~700万円ほどの学費が必要です。

⑥教育の課題

イギリスの教育課題として挙げられるのは、私立学校を廃止すべきかどうかという点。イギリスのほとんどの大学が国立の一方で、小中高には公立と私立が存在します。

一流大学へ進学するためには、圧倒的に有利だといえる私立学校ですが、進学する者はわずかしかいません。公立学校やグラマースクールの学費が無料であることを考えると、私立学校に通う生徒は高額な学費を払うことができる裕福な家庭の子ばかりで、その子たちだけが得をする現状に改革を求める声も多数あるそうです。

 

いかがでしたか?

教育水準監査局Ofstedによって学校の質が分かるイギリス。あらゆる教育機関が基準以上の質を保つためにさまざまな努力をしています。見学に行っただけでは分からない教師や生徒の様子が分かるOfstedは、保護者の間でも必ずと言っていいほど会話に上がる貴重なデータです。

曖昧なことが多い日本と比べると、風通しが良く、安心して子どもを通わせることができるような気がします。

それぞれの優れた点と、改善すべき点を考え、日本の教育がますますすばらしいものになっていくことを願うばかりです。

 

 

Text by yumeka