NOVEL

勝ち組妻 Vol.9 ~「うまくできない!!」完璧主義の主婦と京子の過去~

 

心はぎりぎりのところで、均衡を保っているはずだ。根本的な解決となるのは、人と比べないようにすること…?

だが、今の香織の状況と性格を考えると、それも難しそうだった。

 

「子供は、大きくなったら変わるわ。まだ4歳だもの。それに、拓海くんには良いところだってたくさんあるでしょう?」

「はい、まあ、それはそうなんですけど…。」

 

「人生でつらい時間は、そう長くは続かない。今を終えたら、『ああ、そんなときもあったな。』って思えるはずよ。香織さんのしんどい気持ちは、わたしもわかる。そういうときは、ほら、お菓子食べよう!」

 

その場の空気を変えようと、パンパンと軽く手をたたく。

香織は少しの間うつむき、つぶやく。

 

「そうですね…。こういうときこそのお菓子ですもんね。」

 

ふっと笑い、椅子から立ち上がる。

 

「お菓子、とってきますね。京子さんも食べませんか?」

「ありがとう。いただくわ。」

 

香織の笑顔は、思ったよりも穏やかなものだった。

 

「主人は、二人目を考えているんです。でも、こういう状態じゃあ無理って言い合いになってしまうんです。」

 

菓子皿にスナック菓子を山盛りにして、つまみながら話す。

 

「ご主人は子育てに協力的なの?」

「子供は好きなんでしょうけど、仕事仕事の人ですからね…。ほとんどわたしが家事育児はしています。」

「それは、二人目は無理よ。」

「わたしも子供は好きなので、ほしい気持ちはあるんですけどね。京子さんはすごく母性的ですが、お子さんおられるんですか。」

 

何気ない質問でも、京子の胸は静かにずきんと痛んだ。

 

「いえ、わたしたち夫婦には、子供はいないのよ。…実は、わたしは再婚してるの。」

 

京子は痛みが静まるように、そっと胸に手を当てた。

 

 

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