NOVEL

勝ち組妻 Vol.6 ~平凡な女性の抱える苦しみ~

 

 

里香から手土産としてもらった、銀座ハプスブルク・ファイルヒェンのクッキーを花柄のお皿に出した。

 紅茶は、ウエッジウッドのワイルドストロベリーというティーカップ&ソーサー―を使った。

 

京子のお気に入りだ。

 それだけでこの歓声は、用意をしたこちらとしても鼻が高い。

 

「ふふふ。そんなに喜んでくれたら、わたしもうれしいわ。」

 

 ふたり並んで、ソファに座る。

 紅茶を一口飲み、一息つく。

 

「ほーっ。」

 

里香が斜め上に顔を向け、目を閉じて口を「ほ」の形にする。

 その表情は、本来心を許した人の前でしか見せないものだ。

 心底幸せそうで、どこか色気さえ感じさせる。

 

「いやー、冬にはあったかい飲み物ですね。」

 「そうね。寒い日に飲む温かいものは、体の中から温まるね。」

 「はい!でも、こたつで食べるアイスも最高ですよ。」

 

イヒヒ、と笑いだしそうな笑顔を向け、紅茶をもう一口口に含む。

 里香がソーサーにカップを置き、一呼吸おいて京子は話し始めた。

 

 

「今日は、どうしたの?」

 「…はい。」

 

それまでの明るい笑顔もどこへやら、真剣な表情を浮かべる。

 

「京子さんは、わたしの旦那には会ったことないですよね。」

 「ええ。まだお会いしたことはないと思う。」

 「そのほうが、都合がいいかな。京子さん、今から話すこと、内緒にしていてほしいんです。友達にも相談できなくて…。」

 

里香が京子の表情を一つも逃すまいと、まっすぐと見つめる。

 その雰囲気に、思わずどきりとしてしまう。

 

「もちろん。誰にも言わないわ。」

 

京子の強めの口調に安心したのか、里香が続ける。

 

「ありがとうございます。周りの人には、わたしたち夫婦は、きっと仲良しカップルに見られていると思うんです。こんな話をしなければ、京子さんもきっと、そう言ってくれるでしょう。…クッキー、食べてもいいですか。」

 

「ああ、どうぞ。」

 

手前の四角いクッキーを二口で完食する。

 クッキーを咀嚼しながら里香はしばらく視線を動かしていたが、やがて唇をかみしめ、話し始めた。

 

「…長い話になるので、気楽に聞いてください。」