NOVEL

年収一億超えの妻たち vol.8~疑惑~

その疑念とは「浮気をしているかもしれない」という疑惑だった。

 

いや、そんなはずないわ。

何かの間違いよ…。

そう思いながらもなぜか確信が持てずに、再び良からぬ考えが脳裏を過る。

 

こうして、そんな不安に押し潰されそうになりながらも私は食卓に着き、早苗さんが作ってくれた食事を口に運ぶ。

でも…。

 

 

「どうしたのですか、奥様?食欲がないようですが、体の具合でも悪いのですか?」

「あ…ご、ごめんなさい…そういうわけじゃないの。ただ少し考え事をしてて…」

「あの…もしかして何か悩み事ですか、奥様?」

「そ、それは、その…」

 

突然、図星を突かれてしまい口籠る。

誤魔化した方が良いのだろうか?

 

それとも…。

 

「ええ…実はそうなの。早苗さん、悩みを聞いてもらえるかしら?」

 

一瞬、話そうか悩みはしたものの結局、自分一人では抱え込めないと悟り、早苗さんに悩みを打ち明けようと覚悟を決める。

そして、昨日クリーニングできずにいたハンカチを戸棚の引き出しから取り出し、彼女に手渡した。

 

「早苗さん、これ…どう思う?」

「これは…旦那様のハンカチですか?それにこれは口紅?」

 

ハンカチを受け取った早苗さんは、それを見つめたまま突然、黙り込む。

 

不意に訪れる無音の時間。

その時間は実に、心に不安を感じさせるものだった。

それから、一分前後の時間が経過しただろうか…?

とても長く感じられた…その静かな時間は突然終わりを告げる。

その静けさを終わらせたのは、早苗さんの一言だった。

 

「奥様は、旦那様が不誠実なことをなさると思いますか?」

「分からないわ…。信じたいけど…でも…」

 

少し口ごもりながらも私は何とか、彼女の問いに答える。

しかし、その直後、早苗さんは優しく微笑みながら私に告げた。