NOVEL

年収一億超えの妻たち vol.7~収穫~

そんなものを見せられては、見とれるなという方が無理だった。

そして、思わず見とれてしまっている私と早苗さんに安奈さんが問いかけてくる。

 

「ごめんなさい、これだとあまり役に立たないよね?」

「あ、いえ…そんなことないです。本音を言うと、夫とどんな話しをしようかなと思っていたので本当に参考になります」

「ありがとう…そう言ってもらえると嬉しいわ」

 

その後、安奈さんと語り合った。

 

それより約三時間後、私たちは心を弾ませながら安奈さん宅を後にする。

十分すぎるほど収穫はあった。

その収穫とは共有できるものを持てば、もっと彼のことを知ることができるという事実である。

 

今まで、夫である翔平とどう接していいのだろうかという事ばかりを悩んできたけど、その考えがそもそも間違っていたのだろう。

結局、思い返してみれば求めるばかりで、夫のことを知ろうという努力が足りなかったのかもしれない。

 

早苗さんとて自分の家族のみならず、夫を理解するため努力してきたはず…。

そう考えると、夫の事を知ろうとする努力を怠っていたことに情けなさすら感じる。

 

しかし、それでも……。

 

切っ掛けは掴めたのだ。

 

これから共有できる何かを見つける努力をしていけばいい。

一瞬、後ろ向きになりかけたものの…なんとか心を前向きな気持ちへと切り替える。

 

(そうよ、せっかく手にした切っ掛けだもの…。活かしていかなければ意味がないわよね…)

 

そう…ママ会で得たものを無駄にはできない。

そんな思いから私は進むべき道を模索した。

諦める必要も悩む必要もない。

待っていて状況が変わることなどあり得ないからだ…。

 

(だから一歩踏み出さなきゃならないよね…)

 

心を過る熱い思いを胸に秘め、覚悟を決める。

私も安奈さんや早苗さんが歩んできたように分かり合えるための努力をしていかなければならない…。

同じようにはできないかもしれないけれど、それでも何かを変えられるかもしれない。

行動を起こせば、きっと今よりは何かがマシになる。

そんな一筋の望みを懐き、私は彼の帰りを待った。