NOVEL

運命の輪 vol.6~心の奥に沈むもの~

202X年 527日 午後3

 

ブォン!

エンジン音が上がる

 一瞬、眠っていたのだろう。

現実に引き戻されて、紗希は瞬きを繰り返す。

東に向かって走る車は、インターを過ぎたところだった。

 

「起きた?」

純也が話しかけてくる。

「ごめんなさい、眠ってた?私」

申し訳なさそうに隣に目をやると、前を向いたまま純也が微笑む。

「いいよ、全然、気にならないから。ちょうど目的地だよ」

 

名古屋から高速で1時間と少し。

外を見ると光を受けて煌めく諏訪湖が広がっている。

ピエールの部屋で連絡先を交換したとき、新居の家具を探している話をした。

それを覚えていた純也がお気に入りの工房が諏訪にあるからと、紗希を誘ってくれたのだ。

 

湖の水面を見つめながら、ぼんやりと夢のストーリーを思い返す。

 (あの後、何か話したっけ?)

香那との会話を思い出せず、紗希はもう一度目を閉じた。

 

暗がりの中に答えの詰まった箱が転がっていないか、探るように。

それは湖の底からたった一つの小石を見つけるより、難しいことのように思えた。

 

 

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家具選びに付き合ってくれたお礼に純也を自宅へ招くことにした紗希。その当日、純也は紗希に「本気だ」と気持ちを打ち明ける。