NOVEL

運命の輪 vol.6~心の奥に沈むもの~

信号が青に変わる。

車は緩やかに加速していく。

高速道路に入ると青空が広がった。

もう人の目は気にならない。

真っ直ぐな道が遠い日に繋がっていく気がして、紗希は目を閉じた。

 

16年前 11

 

  • 温かな口づけ

 

「大丈夫!落ち着いて」

 クラス委員の美也子が舞台袖で号令をかける。

「いい?クラスの優勝がかかってるから、みんな頑張って!」

 

文化祭の大トリは紗希たちクラスの演劇だった。順番は抽選らしいけれど、人気者の香那が出演するせいもあったのかもしれない。

 

演目はロミオとジュリエット

 

ロミオにはもちろん、満場一致で香那が選ばれた。渋い顔をしていたけれど、紗希がジュリエットをするなら、と条件を付けた。

紗希はもちろん、断った。がクラス中、いや学校中の切望を受け、引き受けざるを得なかった。

 

「恨むわ、香那」

練習中、何度も囁いたセリフ。

「諦めて、私も引き受けたんだから」

そういう香那はどこか楽しそうだった。