NOVEL

夫婦のカタチ vol.2~ワンオペ育児~

「ワンオペ育児」と世間が呼ぶ生活。

私の4年間を表す言葉。

夜泣きに悩まされる日々も、絵本を毎日読み聞かせる日々も、何でも嫌がるイヤイヤ期も、全て

一人で乗り越えてきた。

 

もちろん子育ては大変だが、大変であること以上に愛おしい。

勇希はとても笑う事が多い。

ビー玉のようにクリっとした目を覗き込むと、いつもふわふわの顔をクシャっとさせて笑う。

自分のお腹から出てきたことをすごく感じられるくらい、私にそっくりな顔。

眉毛がしっかり生えているのは康平譲りだなぁと思っている。

初めて喋った瞬間。

立てるようになった瞬間。

毎日少しずつ成長していく勇希の変化を私は一人で噛みしめる毎日だった。

勇希が成長すればするほど私自身も母として成長していく実感が湧いた。

 

-ある日の公園-

 

勇希が少しずつ喋るようになった頃から、私と勇希は昼過ぎになると決まって近所の公園へ出掛けるようになった。

 

緑に囲まれた公園の真ん中には大きな芝生の広場が広がっている。

木陰のベンチに腰を下ろし勇希の大好きなアンパンマンの牛乳を飲む。

 

この穏やかなベンチでのひと時が、家事と育児に追われながら過ごす日常の束の間の一休みで、私の唯一平穏に過ごせる時間。

二人で木漏れ日を眺めながら風を感じ芝生を走り回る小学生達を眺める。

 

僕も一緒に走りたい!と言うかのように勇希は足をばたつかせた。

勇希をベビーカーから降ろすと早速芝生の方へ向かっておぼつかない足で走っていく。

 

勇希と一緒に遊ぼうと私は貴重品を身につけるため、ベビーカーのカバンを漁った。

ほんのその一瞬だった。

 

聞き覚えのある鳴き声で顔を上げると、勇希は地面に倒れ込んでいた。

転んだ勇希を立たせると様子がおかしい。

どうやら足元の段差でつまずき、石に頭をぶつけたようだ。

おでこがコブのようにみるみる膨れ上がっていく。