NOVEL

夫婦のカタチ Vol.10~私たちのカタチ~

1時間ほどでレストランを出て、私たちは勇希の待つ自宅マンションに向かった。

綾香さんの家のインターホンを押すと、ペタペタ小さな足音が聞こえ、ドアが開くと同時に勇希が抱きついてきた。

「ママ、パパァ〜」

と言って嬉しそうにはしゃぐ姿がとても愛おしかった。

 

康平は勇希を抱っこすると

「今日はママを独り占めにしちゃってごめんな〜。勇希がいい子にお留守番してくれたから、ご褒美だ!」

と言って鞄からペンギンのぬいぐるみを取り出した。

私が水族館で勇希を想っていたように、康平も同じことを思っていたのだ。喜ぶ勇希を穏やかな顔で見守る康平の顔は、すっかり父親の顔になっていた。

 

そんな私たちを見て、綾香さんご夫婦も嬉しそうだった。

「綾香さん、修司さん。お陰様で素敵な1日になりました。2人きりで過ごして初めて、勇希の存在の大きさを感じられました。本当にありがとうございます」

そうお礼を言うと

「これからもお幸せに!」と言って温かく背中を押してくれた。

 

ふとしたきっかけで出会った綾香さんご夫婦のお陰で、私と康平の間には改めて強い絆が生まれた。

この素晴らしい出会いに感謝しながら、これからも温かい家庭を目指していこうと思った。

 

-夫婦のカタチ-

 

次の日の日曜日。

勇希は昨日からお土産のぬいぐるみをずっと離さないで嬉しそうに抱いている。

勇希とペンギンを乗せたベビーカーを押して私たちは久屋大通公園までピクニックに行くことにした。

 

公園につくと勇希は嬉しそうにヨチヨチ足で歩き回る。

康平と一緒なのが嬉しいのか、石や葉っぱを拾っては康平に渡す姿が健気で可愛い。

 

キッチンカーでランチボックスを買い、3人並んでお昼ご飯を食べる。

そしてお腹いっぱいで少し眠そうな勇希を抱いてしばらくのんびりと座り込む。

私たちの近くを若いカップルが手を繋いで通り過ぎて行った。

ヒールを履いて小さな鞄を持ち、彼氏と手を繋ぎながら歩く姿は幸せそうだ。

 

勇希を連れた今の私は相変わらずフラットシューズで、勇希のオムツなどが入った大きな鞄をぶら下げ、手はベビーカーを押すので繋げない。

けれど、若かったあの頃にはない「家族の幸せ」が今の私たち夫婦にはある。