NOVEL

引きこもり女の裏側 vol.4 ~次のステップ~

 

「…ごめん。気持ちはありがたいけど…わたし、結婚とか、考えてなかった。」

 何とも言えない気まずさを感じる。

 部屋には画面越しにタレントの笑い声が響いている。

 

「幸枝は、俺と結婚するのが不安?」

 やっと絞り出したような、か細い声で聞く。

 

「そうじゃないよ。わたしが他人と生活することに耐えられない気がするの。誰かと結婚すること自体に後ろ向きなだけ。」

 「じゃあ、なんで今まで俺と付き合ってきたの。」

 「公平といると楽しかったし、公平が好きだから。それ以外ある?」

 穏やかに言ったつもりだったが、それが逆に公平に火をつけたようだった。

 

「好きだから結婚したいと思うんじゃない?俺は、幸枝が好きだから結婚したい。幸枝はどこか冷めてるように感じるよ。」

 そんなことない、と言おうとして口をつぐむ。

 幸枝は幸枝なりに公平を愛していたつもりだが、それが公平に届いていなければ意味がない。

 

 

今まで何度も言葉にして、わかってもらおうとしてきた。

 

―結婚することが、公平の言う〝愛″ならば、わたしはそれには応えられない。

 

「俺も今混乱してるから、冷静になれない。この話は、また今度にしよう。」

 そう言って勢いよく立ち上がり、部屋から出る。

 

一人になった部屋では、相変わらずなにやら音が流れている。

 公平はどういう気持ちか、幸枝はわかっていた。

 自分の気持ちもわかっていた。

 

その上で、公平とはもう終わってしまうような予感がした。

 

 

next:2月2日更新予定

 職場での幸枝は”ミステリアスだが壁があるわけでもない、人畜無害の真面目な美人”。そんな幸恵が家でやっている意外なこととは・・・