NOVEL

引きこもり女の裏側 vol.3 ~人生初のデート~

 

レストランは、厳かな和風庭園を臨める店だった。

目の前には、一面に広がる池。

周りに植えられた木々の緑と、白い石造りの燈籠に心が自由になる感覚を覚える。

 

「ここは会食でよく来るんだけどね。毎回先方に喜んでいただけるんだよ。」

 

来る人来る人上機嫌なのも納得の店だ。

この光景だけで、幸枝はすでに心を奪われている。

もちろん、塚本のトーク力、人柄もあるのだろうが。

 

 

向付は大トロの炙りとサーモンの刺身。

色もツヤツヤしていて見ただけで新鮮だとわかる。

目の前に出されるおしゃれな料理の数々に、気後れしそうになる。

 

「どうしたの?」

「あ、いえ。すごい綺麗な料理だなと思って。」

「きれいだよね。来るたびに料理が変わるから、俺も楽しいよ。」

 

テンションが上がり、マグロを色々な角度からじっと魅入ってしまう。

くすくすと笑い声をあげながら、言う。

「今のうちによく見といてね。すぐにお腹に入っちゃうから。」

塚本が優しい目で幸枝を見つめる。

 

幸枝はずっと重かった肩が、軽くなるのを感じた。

 

 

 

「今日はありがとうございました。」

ランチを食べ終え、そのまま幸枝の家まで送ってもらう。

 

「こちらこそ。楽しかった。また遊びに行こう!」

爽やかな笑顔で手を振る塚本。

 

この1日で、幸枝はすっかり塚本を気に入っていた。

礼儀正しいし、爽やかだし、一緒にいて気楽でいられる。

チョロイと言われればそうかもしれないが、これまでにないほど気分が高揚しているのは事実だった。

 

―塚本とならまた会ってもいいかも。

今後に繋げたいと思っているのは、幸枝も一緒だった。

「はい。また誘ってください。」

車を静かに発進させて塚本が去っていく。

 

黒く光る車体が見えなくなるまで、幸枝はその後ろ姿を見送っていた。

 

 

次回:1月26日更新

 無事初デートを終えた彼氏いない歴26年の女。次のステップへ踏み出すことが出来るのか!?