NOVEL

引きこもり女の裏側 vol.8 ~誰にも言えない楽しみ~

お昼休憩は食堂で、ひとりで食べる。

今日はラーメンの気分だ。

箸を片手に、こっそりとアプリを開く。席は隅っこ。周りには誰もいない。

 

以前は真剣な交際を希望してはいないとプロフィールに記載しているからか、くる連絡は希望通りのものが大半だった。

今回も大漁に釣れるかどうか。

朝登録をして、すでに3つ〝いいねがついていた。ひとりひとり確認する。

 

さすがにプロフィールだけでは信頼できそうかはわからない。とりあえず、全員とやりとりをしてみることにした。

 

―この感じなら、もう少しハイペースでやり取りしないといけないかも。

 

携帯から視線を逸らしたとき、

 

「なーに見てるのー?」

 

気が付くと斎藤が隣に立っていた。手に持つトレーには、日替わりランチのハンバーグが乗っている。

「あれ、来てたんだ。気付かなかった。」

「あまりにも一人で哀愁を漂わせてたから、来ちゃった。隣いい?」

携帯の画面を落として、白衣のポケットにしまう。

 

―見られてないよね…。

 

見られていたら、最悪だ。幸枝がアプリをしていたと知って、斎藤は吹聴するような人ではないが。

 

「なんかさ、この前アプリの話ちょろっとしたじゃない?わたしも気になって、色々調べてみたんだよね。」

「なんで?」

 

最近アプリを始めた幸枝にとっては、タイミングがよく、ギクリとする。
―バレてないよね。