NOVEL

【最終回】マザーズカースト vol.10~もう、惑わされない~

そんな雰囲気の中で気まずそうに歩み寄るのを躊躇しているのは小百合さん達3人だった。

3人は少し意地になっているのか

「みんな急に手のひらを返しちゃって」

と不貞腐れる様子でシャンパンを傾けながら離れた席に座った。

 

けれど子供はやはりとても素直で、3人の元に子供達が

「ママ達もみんなと遊ぼうよ!」

「みんなで仲良くするほうが楽しいよ!」

と声を掛けに群がって行った。

さすがに子供が相手だと意地になっている訳にもいかず、3人は渋々みんなの輪に入っていった。

 

すると周りのママ達から

「せっかく同じ幼稚園で同じマンションなんですもの。これからはマウントの取り合いなんてやめて子供達を見習って仲良くやっていきましょうよ」

「もう前みたいに気の張った関係は疲れてしまうわ」

「真理子さんも、恵美梨さんもこれまで素直に謝れずごめんなさいね」

そんな声が次々と上がり、私達ママ同士は和やかな関係を取り戻すことができたのだった。

 

 

-みんなで育てる-

 

それからの私たちは素直にお友達同士仲良く遊ぶ子供達を見習い、互いにマウントを取り合うことや、意地の張り合いをやめて協力し合いながら子育てできる関係を築いていった。

 

今まで、子供に関する事だけでなくマンションの何階に住んでいるか、高層階、中層階、下層階でカーストが出来上がっていたが、そんなくだらない考えも次第に薄れて今では階層関係なく、子供を預けあったり支え合う関係ができている。

 

マンションに新たな子連れ入居者が入ると、お喋りの小百合さんらが声をかけて歓迎パーティーを開催する。

パーティーも以前のように誰かに幹事を押し付けるのではなく、みんなで持ち寄りのパーティーを開くようになった。

 

大きなきっかけがあった訳ではなく、自然と関係が改善していったのは不思議なようで必然な気がする。

 

なぜならママ達はみんな共通してあるものを持っているからだ。

 

それは

「我が子の心身の成長を第一に考える気持ち」

この気持ちをみんなが持っている限り、私達の穏やかなママ友関係は今後も続いていくだろう。

 

お稽古やお受験、いろんな場面でこれからも我が子が順位付けされることがあるはずだ。

 

自分の愛する子供に向き合えるこの世で1番の存在は母親であるこの私。

 

私はこれから何があっても惑わされない。

 

 

The End

 

 

はじめから読む:マザーズカースト vol.1~新たな土地へ~