NOVEL

彼女がいても関係ない vol.6 ~仕掛ける手~

 

「雌雄同体ってご存知でした?」

「いや、知らなかったな。よく知っているね」

「ふふ、パリのレストランでシェフに教えて頂きましたぁ」

 

二人の会話を耳にしながら、礼子はワインを口に含む。

 

あと少しで佐智子の名前を告げることが出来たのに・・。

寸前で中断させられたことを礼子は苦々しく思う。

 

 

「・・ですよね?」

「え?」

佐智子に声を掛けられて、礼子は顔をあげる。

 

「礼子さんには、いつもお世話になっています、ってお話ししていたんです」

「そうなんだ」

「はい。礼子さん頼りになるんですよ。私いつも助けて頂いています」

にっこりと微笑む佐智子に納得したように桐生が頷く。

 

「そう言うことですか。山村さん、いつもご苦労様」

「・・いえ」

 

礼子はそれ以上、言葉を続けることは出来ずテーブルの下で拳を作る。

テーブルの上のキャンドルがゆらゆらと赤ワインを照らしていた。

 

 

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 礼子が大事な仕事を任せた佐智子が昨日から出社していない!?営業部の女性社員は皆昼食を取らずに慌てた様子で佐智子の所在を確認するが・・・