NOVEL

引きこもり女の裏側 vol.2 ~とある出会い~

「会って欲しい人がいるんだけど…」

と同僚からある男性を紹介された彼氏いない歴26年の女。

その男の正体とは?

 


前回:引きこもり女の裏側 vol.1 ~心のざわつき~

 

830分の出社に合わせて、朝6時には起きる。

最寄りの茶屋が坂駅から電車で30分ほど行くと、会社がある名古屋駅につく。

通勤ラッシュは避けたいので、いつも少し早めの7時には電車に乗るようにしている。

 

 

布団の中で大きく伸びをして、気合を入れて起きる。

まず一番に、今日のニュースをみるためにテレビをつける。

「続いては、ウルフィの星座占いです。」

地元のテレビ局がやっている占いコーナーが始まった。

朝一番に起きて、この占いコーナーをみるのが日課になっていた。

幸枝は占いという根拠のないものは信じていなかったが、流れてくるものは気になるというものだ。

 

朝食の食パンを焼きながら、テレビに注目する。

『いて座 前向きに考えることで絶好調!』

「それ、毎日言えることじゃん。」

この日は星が2つとまあまあな日のようだ。

その日1日のいて座を代表して、幸枝は毎日何かしら感想を述べていた。

 

 

 

 

地域のニュースや天気予報をながら見し、支度をしていく。

残り時間で化粧もしなければならない。

勤め始めるようになり、周りに合わせてメイクも覚えた。

大学院に行っていた頃は、身なりなどどうでもよかった。

社会人になると、やはり身だしなみを整えなければならない。

店員さんに勧められるままに買ったDIORの口紅をのせて、完了。

 

「うわ、急がなきゃ!」

最寄りといっても、徒歩10分の駅まで、走っていくのはごめんだ。

ダイアナのパンプスを履き、勢いよく玄関のドアを開けた。

 

 

 

会社につくと、すでに同僚が来ていた。

「あら、河合さん、今日も早いね。」

「斎藤さんこそ、毎日早いね。」

斎藤すずは同期の女の子で、幸枝よりも2歳年下の24歳。

大学の薬学部を卒業したあと、新卒で入社した。

背が小さくて華奢な、よく動く子だ。

観察力もあるためか、気も利く。

 

「コンビナトリアル合成しとかなきゃだね、昨日のやつ。」

「そうだね。朝イチでやっとくよ。」

白衣に着替えて研究室に向かおうとしたとき、声をかけられる。

「ねえねえ、河合さん。今彼氏いなかったよね。」

「うん。いないけど。」

「会って欲しい人がいるんだけど…今晩、空いてる?」

 

珍しいな、と思った。

仕事の話以外はなるべくしないようにしている幸枝に、合コンのお誘いをする人はなかなかいない。

「うーん、まあ、空いてるけど。」

「ありがと!ごめんね、急に。じゃあ、仕事終わったら近くの喫茶店で待ってて。」

ポン、と肩を叩いて軽快に斎藤は出て行った。