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至福の1杯・自分で淹れるこだわり珈琲 2

香り高いコーヒーにこだわる方も多いだろう。

淹れて20分ほどで風味が変わってしまうというほど繊細な飲みものであり、産地や焙煎具合などバリエーションが豊かだからこそ好みを発見できるのが興味深い。

たった一杯の時間の間にも是非至福の時間を過ごして頂きたいと思う。

 

前回:至福の1杯・自分で淹れるこだわり珈琲 1

 

時間の魔法がより美味しくするコールドブリュー

コールドブリューという言葉が一般的に聞かれるようになったのはいつ頃からだろうか。

その言葉のとおり、低温抽出という意味をもつこの方法はここ数年で広まった新しい飲み方である。

冷たいコーヒーといえば元々日本でアイスコーヒーが一般的だがそれとは抽出方法が異なる。時間をかけて豆の美味しさをまろやかに表現したもの、それがコールドブリューなのである。

 

アイスコーヒーはカップに氷を入れておき、熱湯で抽出し一瞬で冷やすもの。

深煎りの豆を使用ししっかりと濃いめの味わいにするのが特徴だ。たっぷりの氷で急冷するため琥珀色に透き通った見た目は涼やか。

ホットコーヒーと同じようにすぐに作れるもので便利でもある。これが一般的に見られるアイスコーヒーである。

 

一方、コールドブリューで使用するのは深煎りでなくてもよい。

ミルクなど合わせたい方には深煎りがおすすめだが、さっぱりと味わいたい方は中煎り~浅煎りにするとよい。フルーティな酸味を堪能することができるだろう。

 

じっくり作るからこそこだわりたいのが水。

水道水にはカルキが含まれているためできれば一度沸騰させ、冷ましたものを使用したい。

ミネラルウォーターもおすすめだ。その場合にはコーヒーの味を邪魔しない軟水を使うようにしよう。

 

ここでのポイントは時間をかけること。少なくとも8時間、長めに12時間をかけてじっくりと抽出する。

当然だが水を入れてもすぐにコーヒーが抽出されるわけではない。ゆっくりと時間をかけて抽出されていくのだ。作業は冷蔵庫に入れておくだけ。待っているだけでできるとはなんと手軽であろう。

 

 

苦みや渋みの原因となるカフェイン、タンニンは、水に溶けだしにくいため、コールドブリューはすっきりまろやか。

熱を加える工程がないため酸化しにくい。酸化の原因となるコーヒー豆の油分自体が水に溶けにくいため、すぐに飲み切らない場合でも美味しくいただくことができる。

家でたっぷり飲みたい場合には大きめのボトルで作っておくとよいだろう。

 

器具への追求がその一杯をより豊かにする

コーヒーは淹れ方もこだわるものである。デザインもスタイリッシュなものが多く、2~3台をお持ちの方も多いのではないだろうか。

ハンドドリップであればドリッパーはプラスチックのものからセラミック、ガラス、金属と様々。1つ穴、3つ穴と穴の数が異なったり、形状が円錐形と台形が選べたり、その種類はモノにより異なる。安定したコーヒーの味を保つためには同じ器具で淹れることも大事だが、意外にもお湯を入れる速度が影響する。ゆっくり入れた場合には濃厚になるし、急いで入れてしまうとあっさりとした味わいになる。慣れている場合にはどの器具でも良いのだが、台形のドリッパーを使用した方がそのブレは感じにくい。

 

もしよろしければ興味深い実験をしてみてはいかがだろう。全く同じ豆かつ同じ挽き具合のものを同様の器具を使って何人かでそれぞれ淹れてみて欲しい。結果はどうなるだろうか。同じ豆と器具であれば同じ味になるとお思いではないだろうか?しかし実際は異なる。人によりお湯を注ぐ速度も量も異なるために抽出具合が変わるのだ。飲み比べてみるとその違いははっきりと感じられる。

 

加えて、濃い味わいが好きな場合は1つ穴、さっぱりとしたものが好きな場合には3つ穴が適している。これはコーヒーがカップに落ちていく時間に影響しているためだ。時間をかけて熱で抽出されるほど濃く仕上がるために、その速度を遅くする1つ穴はコクのあるボディが楽しめる。

ペーパーフィルターを使用するものはおなじみだが、最近ではペーパー不要のものも多く取り揃えられている。極上のコーヒーを追求するためにネルフィルターを使用される方もいらっしゃるのでは?上級者向けの技術が必要なものだが、他にはないコクと角のない美味しさを味わえるだろう。

 

本格的な味にはこだわりたいが手軽さも重視、という方にはカプセルコーヒーを取り入れてみるのはいかがだろう。カプセルコーヒーは保管しやすく香りが閉じ込められているので、淹れた途端に部屋中にアロマが広がっていくのがわかる。豊富な種類からお気に入りのものを見つけられるし、飲むたびにどれにしようか迷うことができるのも嬉しい。

特にネスプレッソはマシンを販売すると共に高いクオリティの感じられるカプセルを広く販売している。産地も世界中から揃えられており、シングルオリジンやフレーバーコーヒーなど気分を変えたい時にもぴったり。13段階の焙煎度合いで濃さが書かれており、お好みのものを見つけやすいだろう。他では珍しいデカフェの商品も用意されているので、夜はカフェインを避けているという方にもおすすめだ。

 

複数種類あるマシンは、ミルクも同時に淹れられるものやデスクに置いても邪魔にならないコンパクトさが特徴のものもある。朝の忙しい時にも妥協しない味を提供してくれる筈だ。

 

ハイエンドこそ意識するSDGsとコーヒーの話

ビジネスではもはや当たり前のSDGs。持続可能な開発目標に農産物であるコーヒーが関わるのは必須である。

日本にいると実感しにくいかもしれないが、コーヒーは農園で育てられ加工され、流通を経て日本に輸入される。輸入後も加工を経てやっと私たちの元に届けられるのだ。農園から朝の一杯までの距離は非常に遠い。だからこそ数多くの問題を抱えやすいのがコーヒー豆。農作物である以上環境の変化に影響されやすく、近年の温暖化により病気になりやすい、収穫量が低下するということも起きている。

 

これまでコーヒーを飲まない文化にあった中国やインドの需要が増加したことにより、全体のコーヒーバランスも変わってきており、世界的な供給量の持続が望まれている。また、コーヒーの生産地の多くは開発途上国。フェアな取引が行われているか直接確認することはできない。地域によっては一方的な価格交渉が行われたり、児童労働が発生している可能性もある。我々が美味しいコーヒーを飲みたいという欲求が世界の誰かの生活に影響していることは忘れないでおきたい。

では、何ができるだろうか。

 

大手のコーヒーメーカーはSDGsの取り組みをホームページで紹介しており、消費者はその情報を共有することができる。特に世界規模の大きな企業が参画する「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」は各企業の取り組みを知ることができるのでハイエンドこそ知っておくべき事項だ。

持続可能なコーヒー生産のためにできるのは正しい生産・加工・流通を経てきたものを購入するということ。生産者に対し農園単位で適正な労働条件を提供している証となる「レインフォレスト・アライアンス」、生産・加工の段階で生産者に加え環境にも配慮していることを示す「UTZ Certified」、そしてフェアトレードで現地の人にも適正な価格で取引されたものであれば、生産者の暮らしを守ることに繋がる。

 

目の前の一杯は多くの人の手に紡がれ海を渡ってきたもの。

そのありがたみを感じつつ、今日も美味しいコーヒーを淹れようではないか。

 

 

前回:至福の1杯・自分で淹れるこだわり珈琲 1